AIの手順書が業界共通の形に|書いた手順は乗り換えても残る
Anthropicが、AIに仕事の手順を教える形式「Agent Skills」を、特定の会社に属さない団体へ寄付しました。ChatGPTやGitHub Copilotなど、70を超える製品がこの形式に対応しています。
社内の手順をこの形で書いておけば、使うAIを乗り換えても書き直さずに済みます。中身はふつうの文章なので、詳しい人がいなくても書けます。
一方で、他人が作ったスキルにはプログラムを同梱できます。入れる前に中身を見る、というルールを先に決めておきます。
AIに毎回同じ説明をしている、という声をよく聞きます。「見積書はこの順で書いて」「お客さまへのメールは、最初にお礼を入れて」。チャットを開くたびに一から伝え直すのは、地味に手間です。
この「AIに渡す手順書」の形式が、業界の共通の形として育てられることになりました。Anthropicが10月22日、自社で作った形式「Agent Skills」を、特定の会社に属さない団体へ寄付すると発表しました。
今日やること 社内でAIに何度も同じ説明をしている作業があれば、その説明を1つの文書に書き出しておいてください。どのAIを使っていても、無駄になりません。あわせて、社外の人が作ったスキルを入れる前に、誰が中身を見るかを決めておきます。 何もしなくていい人 AIは思いついたときに質問するだけで、決まった手順を繰り返し頼むことがない会社です。今回の話は、急いで手をつけるものではありません。
何が起きたか
Anthropicは公式の発表で、Agent Skillsの規格と名前、関連するサイトを、Linux Foundationの傘下にあるAgentic AI Foundationへ寄付すると明らかにしました。
- Agent Skillsは、AIに仕事の手順や知識を渡すための形式。中身は「SKILL.md」という文書を入れたフォルダ
- 2025年10月にAnthropicのClaude Codeで使えるようになり、2025年12月に誰でも使える規格として公開された
- 発表によると、70を超えるAIの製品が対応しており、ChatGPT、GitHub Copilot、Cursor、VS Codeの名前が挙がっている
- 今後は、Anthropic、Google、OpenAIなどの技術者が規格の保守にあたる。版の管理や、スキルを書く人・入れる人向けのセキュリティの指針も提案されている
中小企業にとって何が変わるか
手順書がAIの乗り換えで無駄にならない
規格の公式サイトは、一度作ったスキルを、対応するどのエージェントでも使えることを利点に挙げています。
これまでも、AIに渡す社内の手順を書きためている会社はありました。ただ、それがどのAIで使えるかは、製品ごとの作りしだいでした。社長はChatGPT、経理の担当者はCopilotを使っている、という状況はめずらしくありません。今回の寄付で、1社の都合で形式が変わる心配は小さくなりました。手順を書く手間が、特定の製品に閉じ込められにくくなったということです。
使うAIは、料金や性能でこれからも変わります。変わらないのは、自社の仕事の進め方のほうです。そこを書いておけば、道具を替えても持ち越せます。
書く中身はふつうの文章
SKILL.mdに書くのは、名前と「どんなときに使うか」の説明、そして手順です。プログラムの知識は要りません。新人に渡す手順書と同じ書き方で足ります。
AIは最初に名前と説明だけを読み、頼まれた作業に合うときにだけ全文を読みます。手順書を何本置いても、ふだんの会話の邪魔になりにくい作りです。
他人のスキルは、ソフトを入れるのと同じ
注意したいのはこちらです。スキルのフォルダには、文章だけでなくプログラムも同梱できます。AIは手順に従って、そのプログラムを動かすことがあります。
ネットで見つけた便利そうなスキルを入れるのは、出どころの分からないソフトを社内のパソコンに入れるのと変わりません。発表で、スキルを入れる人向けのセキュリティの指針がわざわざ提案されているのも、この危うさがあるからです。
当てはまるかどうかを分ける
| AIの使い方 | 今回の話との関係 |
|---|---|
| 思いついたときに質問するだけ | ほぼ関係ない。今のままでよい |
| 同じ説明を毎回チャットに貼っている | 手順を1つの文書に書き出すと、どのAIでも使い回せる |
| 社員ごとに違うAIを使っている | 手順を共通の形で書いておけば、使うAIがそろっていなくても同じ手順を渡せる |
| 社外で配られているスキルを入れたい | 入れる前に中身を見る人を決める。プログラムが入っていないかを確かめる |
よくある誤解:「AIの専門家向けの話で、うちには関係ない」
「規格」「団体へ寄付」と聞くと、開発者だけの話に見えます。ですが、スキルの中身は手順を書いた文書です。書くのに必要なのは、AIの知識より、自社の仕事の進め方を知っていることのほうです。
むしろ、手順を知っている人が社内に1人しかいない中小企業ほど、関係があります。その人の頭の中にある手順を文書にしておけば、AIにも、次に入る人にも渡せます。AIのために書いた手順書は、人のための手順書にもなります。
いま何をすべきか
- AIに繰り返し説明している作業を1つ選ぶ。見積書、お礼のメール、日報のまとめなど、毎回同じことを伝えているものです
- その説明を、新人に渡すつもりで書き出す。「どんなときに使うか」を1行目に書きます。いまのAIが対応していなくても、文書として残せば無駄になりません
- 社外のスキルを入れるときの決まりを1行作る。「入れる前に〇〇さんが中身を見る」で足ります
AIに詳しくなる必要はありません。仕事の手順を書き残すことが、そのままAIへの準備になります。
関連するもっと詳しい話
手順を書き出すとき、分厚いマニュアルを作ろうとすると止まります。マニュアルが読まれない理由|読ませる工夫より、要らなくするに、読まれる手順書の絞り方をまとめました。スキルの1本も、同じ考え方で短く書けます。
手順が特定の人の頭の中にしか無い場合は、書き出す前の段階から始めます。属人化はAIで解消できるか|先に手をつけるのは「その人の頭の中」で、その取り出し方を書いています。
社内の手順をAI向けにまとめる進め方で迷ったら、お問い合わせからご相談ください。
どこから手をつけるか分からない場合は、ご相談ください。いまのやり方を伺うところから始めます。ご相談とお見積りに費用はいただきません。
相談する