ChatGPTの会話を人が読む|貼らないものを1行決める
2026年9月14日、404 Mediaが、OpenAIが外部の契約スタッフにChatGPTの実際の会話を読ませ、回答を採点させていると報じました。契約スタッフには利用者名は見えず、OpenAIは個人情報を取り除いてから渡していますが、取り切れない場合があることも認めています。
OpenAIのヘルプには、個人向けのChatGPTは会話が学習に使われること、止めるには設定の「すべての人のためにモデルを改善する」をオフにすること、法人向けのChatGPT BusinessやEnterprise、APIは既定で学習に使わないことが書かれています。
会社が決めるのは2つです。社員がどの口でChatGPTを使うか。個人の口で使う場合は設定をオフにしたうえで、それでも貼らないものを1行で決めて伝えることです。
「AIに貼ったものは、AIが読む」と、たいていの人は思っています。今回のニュースは、そこに人が加わっていた、という話です。驚く話ではありません。OpenAIのヘルプには前から、個人向けのChatGPTの会話は学習に使うと書いてあります。驚く話ではないのに、社員の多くはそれを知らずに貼っています。会社が決めていないからです。
今日やること 会社の契約(ChatGPT BusinessやEnterprise、API経由の社内ツール)で使っている会社は、何もしなくて構いません。既定で学習には使われません。 社員が個人のアカウント(無料・Plus・Pro)で仕事に使っている会社は、2つ決めてください。そのまま個人の口で使わせるのか、そして貼らないものは何か。後者は1行で足ります。
何が起きたか
2026年9月14日、404 Mediaが「Project Lily」と呼ばれる取り組みを報じました。OpenAIが外部の契約スタッフを集め、ChatGPTの実際の利用者の会話を読ませ、回答の良し悪しを採点させているという内容です(404 Media:Inside 'Project Lily': The Humans Reading Your ChatGPT Chats)。契約スタッフが読むのは、利用者が打ち込んだ文章とAIの返答です。利用者名は見えません。OpenAIは個人情報を取り除いてから渡していますが、取り切れないことがあるとも認めています。記事では、Anthropicも同じように人による確認を行っていると認めた、と書かれています。
OpenAI側の仕組みは、公式のヘルプに書かれています。
- 個人向けのChatGPTとCodexでは、会話の内容を学習に使うことがある。止めるには、設定の「データコントロール」で「すべての人のためにモデルを改善する(Improve the model for everyone)」をオフにする(OpenAIヘルプ:How your data is used to improve model performance)
- オフにすると、それ以降の会話は学習に使われない。過去の会話には遡らない
- オフにしていても、回答に「いいね」「よくないね」を押すと、その会話全体が学習に使われることがある
- 「一時チャット」は履歴に残らず学習にも使われない。ただし不正利用の監視のために確認されることはあり、30日後に削除される(OpenAIヘルプ:Data Controls FAQ)
- ChatGPT Business、Enterprise、Edu、APIは、既定で学習に使わない。使うのは、利用者が明示的に同意した場合だけ(OpenAI:Enterprise privacy at OpenAI)
中小企業にとって何が変わるか
変わったのは事実ではなく、社員の想像
仕組みは前からこうでした。変わったのは、「人が読んでいる」という具体的な絵が社員の頭に入ったことです。「AIに貼る」が「知らない誰かに見せる」と同じだと、社員が実感を持って理解した日だからです。会社が線を引くなら、今日が引きやすいです。
うちは当てはまるのか
| 社員がChatGPTを使っている口 | 会話は学習に使われるか | 今日やること |
|---|---|---|
| 会社契約のChatGPT Business/Enterprise | 使われない(既定) | 何もしなくていい |
| API経由の社内ツール(自社で作ったチャットなど) | 使われない(既定) | 何もしなくていい |
| 社員の個人アカウント(無料・Plus・Pro)で仕事に使っている | 使われる(既定) | 下の2つを決める |
| 会社として使っていないつもり | 社員が個人で使っていれば上と同じ | 使っている人がいるか、1回だけ聞く |
3行目の会社が、いちばん多いはずです。会社は契約していない。でも社員は使っている。ここで起きているのは「情報漏洩」というより、会社が決めていない場所に会社の情報が流れている状態です。
よくある誤解:設定をオフにすれば安心
「すべての人のためにモデルを改善する」をオフにすれば済む、と思われがちです。ヘルプを読む限り、それでは足りない場面が2つあります。
1つは、過去の会話には遡らないことです。オフにする前に貼ったものは、そのままです。もう1つは、「いいね」「よくないね」を押した会話は、オフでも学習に使われることです。社員がAIの回答を評価する癖をつけていると、設定は効きません。
つまり設定は、社員1人1人が正しく操作し、評価ボタンを押さず、これから貼るものにだけ効くものです。個人任せの設定に会社の情報を預けるのは、設定の問題ではなく、会社が決めていない問題です。
「読まれて困るもの」は、会社ごとに違う
ここで一般解を出しても意味がありません。顧客の氏名と電話番号が困る会社もあれば、見積の原価が困る会社もあります。社名を出さない文章の言い回しの相談なら、読まれても困らない会社がほとんどです。
決めるのは、「これだけは貼らない」を1行で言えるかです。「顧客の氏名と連絡先」「原価と仕入先」「社員の評価」——たいてい3つ以内に収まります。全部を禁止すると、AIを使う意味がなくなります。使う意味が消えると、社員は黙って個人の口で使い続けます。それが、いちばん困る状態です。
「AIを入れた」より先に減るもの
この件で減るのは、業務ではなく「迷う時間」です。貼ってよいか迷いながら使っている社員は、渡す前に手で伏せ字にしたり、使うのをやめたりしています。1行決めるだけで、その迷いが消えます。減るのは作業ではなく、判断の手間です。
いま何をすべきか/何もしなくていいか
| いまの状態 | やること |
|---|---|
| ChatGPTを誰も使っていない | 何もしなくていい。使い始めるときに、この記事の2つを決める |
| 会社契約(Business/Enterprise/API)だけで使っている | 何もしなくていい。ただし「個人の口では使わない」を1行伝えておく |
| 社員が個人アカウントで仕事に使っている | 会社契約に移すか、個人のまま認めるかを決める。個人のまま認めるなら、設定をオフにする手順と、貼らないものの1行を伝える |
| 何も分からない | 「ChatGPTを仕事で使っている人はいますか」と1回聞く。答えが出てから決める |
個人のまま認める場合、伝えるのは3つです。「設定の『すべての人のためにモデルを改善する』をオフにする」「回答の評価ボタンは押さない」「顧客の氏名と連絡先は貼らない(自社の1行に置き換える)」。口頭で足ります。ルール文書にする必要はありません。
決めるのは、貼らないものの1行です。AIが読むか人が読むかは、会社が決められることではありません。何を貼るかだけが、会社が決められることです。
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