問い合わせ欄の一文でAIが情報を送信|読ませるなら分ける
セキュリティ企業のZenity Labsは2026年9月24日、SalesforceのAI「Agentforce」の弱点を公開しました。
誰でも送れる問い合わせフォームに指示を仕込んでおくと、社員に頼まれてその問い合わせを読んだAIが指示に従い、取引先の情報を外へ送ってしまうものです。Salesforceは修正済みです。
ただ、同じ形は自社のAIの使い方でも作れます。外から来た文章を読ませるAIには、社内の台帳を見せない。決めるのはこの1行です。
今朝の記事は、Copilotの請求の話でした。今回はお金ではなく、情報の出口の話です。ホームページの問い合わせフォームに書かれた一文が、社内のAIへの「指示」として動いてしまいました。起きたのは大企業向けの製品ですが、形そのものは、中小企業のAIの使い方でも簡単にできあがります。
今日やること SalesforceのAgentforceを使っていなければ、この製品については何もしなくて構いません。修正も済んでいます。 そのうえで1つだけ決めておきます。問い合わせやメールなど、外から来た文章をAIに読ませるなら、そのAIには顧客台帳や取引先の一覧を見せない。
何が起きたか
セキュリティ企業のZenity Labsは2026年9月24日、SalesforceのAI「Agentforce」で見つけた弱点を「SalesBleed」という名前で公開しました(Zenity Labs:SalesBleed: 0-Click Data Exfiltration in Agentforce)。
流れはこうです。攻撃する側は、会社のホームページにある見込み客の登録フォーム(資料請求や問い合わせのフォーム)に、普通の問い合わせを装って、AIへの指示を書き込みます。社員が後日、AIに「最新の見込み客を確認して、いちばん新しい件を手伝って」と頼みます。AIはその問い合わせを読み、書かれていた指示に従って取引先の情報を検索し、社名や商談の規模といった中身を外のサーバーへ送ってしまいました。社員は何もクリックしていません。
Slackと連携させている場合は、リンクのプレビューが自動で開く仕組みを通じて同じことが起き、さらにAIを装った偽のメッセージを社内のチャンネルに流すこともできました。Zenity Labsによると、報告は2026年6月1日、Salesforceの修正が確認されたのは8月19日です(SecurityWeek)。
中小企業にとって何が変わるか
問い合わせフォームは「誰でも書ける入口」
今回の要所は、弱点そのものより入口の場所です。問い合わせフォームは、世界中の誰でも、名乗らずに文章を送れる場所です。これまでそこに届く文章は、人が読むものでした。人が読むなら、おかしな文章は「おかしな問い合わせ」で終わります。
AIが読むと話が変わります。AIにとって、問い合わせの本文も、社員からの依頼も、同じ「読んだ文章」です。どちらが指示でどちらが材料かを、いつも正しく分けられるとは限りません。外の人が書いた文章が、社員の頼みごとに紛れて、AIへの指示として動く。今回起きたのはこれです。
危なくなるのは、3つがそろったとき
Salesforceを使っていない会社にも関係があるのは、この事故が特別な製品の話ではないからです。起きる条件は3つに分けられます。
- 外の誰でも書ける文章を、AIが読む(問い合わせ、メール、口コミ、応募書類)
- 同じAIが、社内の台帳を読める(顧客一覧、取引先、見積もり、商談メモ)
- AIの返事から、外へ出る道がある(リンクや画像の表示、メールの送信、外部サービスへの書き込み)
1つずつなら、どれも普通の使い方です。問い合わせメールの要約をAIに頼む。顧客一覧をAIに探させる。どちらも便利です。困るのは、それを1つのAIにまとめて任せたときです。「問い合わせを読んで、顧客台帳と照らし合わせて、返信の下書きまで作って」という頼み方は、まさにこの3つを1か所にそろえています。
うちは当てはまるのか
| いまの使い方 | 今回の件との距離 |
|---|---|
| ChatGPTなどに、社員が自分で書いた文章だけを渡している | 1が無いので、この形にはなりません |
| 届いた問い合わせやメールをAIに要約させている。台帳はつないでいない | 2が無いので、出ていく情報は限られます |
| メールやフォームと、顧客台帳・ドライブの両方をAIにつないでいる | 1と2がそろっています。ここがいちばん注意する場所です |
| 問い合わせへの返信や登録を、AIが人を通さずに進めている | 3までそろっています。止めて使い方を見直す段階です |
多くの中小企業は、上の2行のどちらかでしょう。気にしてほしいのは、AIとメール、AIとドライブを「便利だから」とつなぎ始めた会社です。つなぐ作業は数回のクリックで終わるので、3つがそろったことに気づきにくいのです。
よくある誤解:怪しい問い合わせなら、人が見れば分かる
分からないことがあります。今回の指示は、問い合わせの項目の1つにまぎれ込ませたものでした。人の目には、ありふれた問い合わせの一部にしか見えない書き方もできます。
それに、この形では人が読む前にAIが読みます。社員がしたのは「新しい見込み客を見て」と頼んだことだけです。受付の担当者がどれだけ注意深くても、その前にAIが中身を実行してしまえば間に合いません。
「修正済みだから関係ない」も、半分だけ正しい答えです。Salesforceの弱点は直りました。ただ、上の3つをそろえる使い方は、どの会社のAIでも作れます。直せるのは製品の穴で、使い方の形は自分で決めるしかありません。
いま何をすべきか/何もしなくていいか
| いまの状態 | やること |
|---|---|
| Agentforceを使っていない | この製品については何もしなくていい |
| Agentforceを使っている | 修正は済んでいます。問い合わせを読むAIが、どこまで取引先の情報を検索できるかだけ確かめる |
| 問い合わせやメールをAIに読ませている | そのAIには顧客台帳・取引先一覧・見積もりをつながない。照らし合わせは人がやる |
| AIが返信や登録まで自動で進めている | 外へ出す前に、人が1回見る工程を戻す |
大きな会社なら、ここで専用の監視の仕組みを入れる話になります。人手の足りない会社がそれをまねる必要はありません。読ませるAIと、台帳を見るAIを分ける。これだけで3つのうち1つが欠け、今回の形は成り立たなくなります。
社内ルールにするなら、1行で足ります。「外から来た文章を読ませるAIには、社内の台帳を見せない」。AIをつなぐたびに、この1行と照らし合わせてください。
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