AIのルールはあるが記録は11%|確かめる場面を1つ決める
デロイト トーマツ グループの調査で、AIのガイドラインを作って周知している企業は72%でした。一方で、AIへの入力と出力を記録している企業は11%、出力を定期的に、または人が確かめている企業は8%にとどまりました。
ルールはあっても、守られているか、AIの答えが正しいかは、使う本人に任されているということです。
中小企業が記録と監査の仕組みを全部そろえる必要はありません。やることは、人の目を必ず通す場面を1つだけ決めることです。
生成AIの社内ルールを作った会社は増えました。ところが、そのルールのもとでAIが何を答え、それがそのまま社外に出ていないかを、会社として確かめているところはほとんどありません。デロイト トーマツ グループの調査が、その差を数字で示しました。ルールを作ったあとの確認は、ほぼ全部が使う本人の注意に任されています。人の少ない会社ほど、この状態は他人事ではありません。
今日やること 生成AIを社内で誰も使っていない会社は、何もしなくて構いません。 誰か1人でも仕事でAIを使っている会社は、1つだけ決めます。「AIで作ったものが社外に出る前に、本人以外が1回見る場面」を1つ決める。記録の仕組みや監査の体制は、いまは要りません。
何が起きたか
デロイト トーマツ グループが「企業の不正リスク調査白書 Japan Fraud Survey 2026-2028」を発表しました。無作為に選んだ上場企業と非上場企業に、2026年5月から8月にかけてアンケートを依頼し、397社が答えた調査です。今回で10回目になり、今回は生成AIの利用に伴うリスクへの対応を重点的に調べています(デロイト トーマツ グループ:ニュースリリース)。
AIの部分の結果は次のとおりです。業務の効率化にAIを使っていない企業は9%で、大多数はすでに使っています。そのうえで、ガイドラインの策定と周知は72%、研修などの対策は54%が実施していました。一方で、AIへの入力と出力を記録・保管している企業は11%、出力に対して定期的に、または人による監査やレビューをしている企業は8%でした。リリースはこの状態を、リスクへの対応が利用者本人の注意や判断に依存している、とまとめています。
中小企業にとって何が変わるか
「ルールがある」と「確かめている」は別のこと
ガイドラインは、AIに何を入れてよいか、何に使ってよいかを決めるものです。決めたあと、その通りに使われているかを見る仕組みが無ければ、守るかどうかは本人しだいになります。
今回の数字は、そのすき間の大きさを示しています。ルールを周知している会社が7割を超える一方で、AIの答えを人が確かめている会社は1割に届きません。ルールは書いてあるが、守られたかどうかを誰も見ていない。これが多くの会社の今の姿です。
さらに、仕事のためにAIを個人で使う場合の承認の流れ、教育、問題が起きたときの対応については、「社内ガイドラインの策定と周知を実施している」と答えた企業は5%で、74%は「実施していない、わからない」と答えています(デロイト トーマツ グループ:ニュースリリース)。会社が用意したAIの外で、社員が自分のアカウントで使っている分は、なおさら見えていません。
よくある誤解①:「ルールを作ったから、対策は済んだ」
済んでいません。ルールは「こうしてほしい」という約束で、守られなかったときに止まる仕組みではありません。AIの答えに誤りが混ざっていても、ルールの紙は気づきません。気づけるのは、出る前にそれを読んだ人だけです。
中小企業でルールを作った会社ほど、ここで安心してしまいがちです。作ったルールが悪いのではありません。ルールと別に、確かめる場面が1つ要る、というだけです。
よくある誤解②:「上場企業も入った調査だから、うちには関係ない」
調査の対象は上場企業と非上場企業で、従業員数の小さな会社だけを調べたものではありません。ただ、人も予算もある会社でさえ、人が確かめているのは1割に届かない、という結果です。専任の担当者がいない会社で、何も決めずに確かめる仕組みが自然にできることはありません。規模が小さいほど、AIを使う人と確かめる人が同じになり、本人以外が誰も見ない状態になりやすくなります。
うちは当てはまるのか
| いまの状況 | 今回の件は |
|---|---|
| 仕事で生成AIを使っている人が社内にいない | いまは関係ありません |
| AIは社内のメモや下書きにしか使っていない | 急ぐ必要はありません。社外に出るものが出てきたら決めます |
| AIで作った文章や資料が、お客様や取引先に届いている | 当てはまります。本人以外が見る場面を1つ決めます |
| 社員が自分のアカウントで、会社の把握していないAIを使っている | 当てはまります。どの仕事で使っているかを先に聞き取ります |
いま何をすべきか
人の目を通す場面を1つだけ決める
大きい会社なら、入出力の記録を残す仕組みを入れ、定期的に監査する担当者を置けます。人手の足りない会社に、それはそのまま持ち込めません。仕組みを入れても、見る人がいなければ記録は溜まるだけです。
だから、全部を確かめようとせず、1つの場面に絞ります。選ぶのは、AIで作ったものが社外に出る場面です。お客様への返信、見積りや提案書、ホームページやSNSに載せる文章のうち、いちばんよく出ているものを1つ選びます。そして「これは出す前に、作った本人以外が1回読む」と決めます。
読む人に要るのは、AIの知識ではありません。いつもその仕事の中身を見ている人が、数字・固有名詞・約束している内容の3点に目を通せば足ります。社内のメモや下書きのように、間違っても社内で直せるものは、本人の判断に任せたままで構いません。
確かめる場面が1つ回り始めると、どんな誤りが混ざりやすいかが見えてきます。そこで初めて、ルールに1行足すか、確かめる場面を増やすかを考えれば十分です。AIを入れたかどうかより、出る前に誰が見ているかのほうが、会社を守ります。
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