OpenAIの電話AIが1分5セント|それは部品の値段
電話をAIに出させる予定が無い会社は、何もしなくて構いません。ただ「AI電話」の営業が来たとき、値段の内訳を聞く材料としてだけ持ち帰ってください。
OpenAIが9月10日に公開したのは、相手の話を聞きながら同時に話せる音声AIです。電話への接続に対応し、1分5セントを秒単位で課金します。発表文は「レストランの予約から顧客対応まで」と書いています。
ただし5セントは会話の部品の値段です。考える側のモデル、電話番号と回線、台本の設計は別に要ります。先に決めるのは、どの電話をAIに出させて、どの電話を人に残すかです。
電話に出るのは、いまも人の仕事です。作業中に鳴って、手を止めて、用件を聞いて、メモを書いて、担当に渡します。用件の半分は営業時間の確認と予約の変更で、それでも出ないわけにはいきません。「AIが電話に出る」という話は前からありましたが、値段は業者ごとにばらばらで、中身の値段は見えませんでした。
9月10日にOpenAIが公開したのは、その中身にあたる部品です。値段が付いています。1分5セント、秒単位。この数字をどう読むかで、今後来る「AI電話」の営業への向き合い方が変わります。
今日やること 電話をAIに出させる予定が無い会社は、何もしなくて構いません。 「AI電話」の営業が来たら、月額のうち会話の部品がいくらで、電話番号・回線・台本がいくらかを聞いてください。 導入を考えるなら、値段より先に「どの電話をAIに出させて、どの電話を人に残すか」を1行で決めてください。
何が起きたか
OpenAIは9月10日、音声AI「GPT-Live-1」をAPIで提供開始しました。相手の話を聞きながら同時に話せる仕組みで、途中で割り込まれても会話が崩れません。電話回線への接続に対応し、発表文は用途を「レストランの予約から顧客対応まで」と書いています。料金は音声の部分が1分あたり0.05ドルで、秒単位の課金です。深く考える部分を担う別のモデルや道具の利用料は、別に請求されます(OpenAI「Build more natural voice experiences with GPT‑Live‑1 in the API」/OpenAI API ドキュメント「GPT-Live 1」)。
声は12種類が追加され、対応言語は今後数か月で広げるとしています。発表文に日本語の記載はありません。
中小企業にとって何が変わるか
今日から電話がAIに変わる会社はありません。これは開発者向けの部品で、そのままでは電話に出ません。中小企業がこの発表から受け取るものは、機能ではなく値段の見え方です。
値段が見えたのは、会話の部品だけです
電話にAIが出るには、少なくとも4つが要ります。会話をする部品、内容を理解して判断する部品、電話番号と回線、そして「何を聞いて、何を答えて、どこで人に代わるか」の台本です。今回値段が付いたのは、1つ目だけです。
OpenAIの資料もそう書いています。会話の部分が1分0.05ドルで、判断を担う後ろのモデルと道具の利用料は別。回線はTwilioやTelnyxなど別の会社のサービスを通してつなぐ案内になっています。台本は、使う側が書きます。
つまり、「AI電話は1分5セント」ではありません。「AI電話の会話部分は1分5セント」です。この違いは、業者の見積を読むときに効きます。月額の中に、5セントの部品がどれだけ入っていて、残りは何の値段なのか。聞けば答えが返る質問になりました。以前は聞きようがありませんでした。
よくある誤解:AIが電話に出れば、電話番はいらなくなる
そうはなりません。理由は技術ではなく、電話の中身です。
かかってくる電話を思い出してください。営業時間の確認、予約の変更、道順、在庫の有無。こういう電話は、答えが決まっていて、間違えても言い直せば済みます。一方で、クレーム、支払いの相談、取引先からの急ぎの連絡、「社長いますか」。こちらは答えが決まっていないうえ、間違えると取り返しがつきません。
OpenAIの発表に載っている使い方も、予約と注文の電話です。Yelpが電話の予約と料理の注文にこの部品を使っている、という例が挙がっています。逆にいえば、そこまでです。AIが出られるのは、答えが決まっている電話だけで、それ以外は今までどおり人に回ります。電話番が消えるのではなく、電話番が出る電話の種類が減る、が正しい見立てです。
減る種類が多い会社と、ほとんど無い会社があります。飲食店や美容室のように予約の電話が大半なら減ります。取引先との電話が大半の会社は、ほぼ減りません。同じ「電話が多い」でも、中身が違えば答えが違います。
うちは当てはまるのか
| いまの状況 | 今日の見立て |
|---|---|
| 電話がほとんど鳴らない | 何もしなくて構いません |
| 電話は多いが、大半が取引先や既存客との相談 | AIに出させる電話がありません。見送りで構いません |
| 予約・営業時間・道順の電話が大半(飲食・美容・整体など) | 減らせる電話があります。ただし業者に頼む前に、下の「1行」を決めてください |
| すでに「AI電話」を業者から入れている | 月額の内訳を聞き直す材料になりました。会話部分の原価が公表されたためです |
| 自社で仕組みを作れる人がいる | 無料枠では使えず、日本語の品質は公表されていません。試すなら自社の電話を録った台本で、短く試してください |
いま何をすべきか/何もしなくていいか
やらなくていいことから書きます。この発表を理由にAI電話を入れる必要はありません。部品が安くなっただけで、電話に出る仕組みが安くなったわけではありません。業者の営業が「OpenAIの最新の音声AIを使っています」と言っても、それだけでは何も分かりません。部品は誰でも同じ値段で買えます。差が出るのは台本と、人に代わる設計です。
電話をAIに出させることを考えている会社がやるのは、1つです。値段の前にこれを決めます。
AIに出させる電話と、人に残す電話を、1行ずつ書く。
書き方は難しくありません。1週間、電話に出た人が用件を一言だけメモします。「予約変更」「営業時間」「請求の件」「社長宛」。それを並べて、答えが決まっていて、間違えても言い直せるものにだけ印を付けます。印が付いた種類が全体の半分を超えるなら、AIに出させる価値があります。超えないなら、この話は終わりです。
この線引きは、電話に限った話ではありません。AIに任せていい仕事かどうかを「判断の基準を言葉で説明できるか」「間違えても取り返しがつくか」「量が多いか」の3つで見る方法を、AIに任せていい仕事の見分け方|判断は新人と同じ基準でに書きました。電話はこの3つがそのまま当てはまる仕事です。
もう1つ。電話をAIに出させたい理由が「電話に出るのが面倒だから」なら、順番が違います。電話の後ろには、聞いた内容を紙に書いて、予約台帳に写して、担当に伝える作業があります。手間の本体はたいていそちらです。毎日発生して、誰がやっても同じ結果になり、転記が絡む業務から手を付ける考え方は、業務改善は何から始めるか|最初に選ぶ3つの条件に書きました。電話のメモの転記は、AIに出させるより先に、安く片づく場合があります。
AIに詳しくなる必要はありません。覚えるのは、5セントは部品の値段で、決めるのは出させる電話の種類、の2点です。
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