Gemini新音声認識|1時間の会議が0.3ドル
文字起こしの精度と値段は、もう会社が悩む場所ではなくなりました。
Googleの見積りで1分あたり約0.005ドル。1時間の会議で0.3ドル前後です。
ただし今日ツールを買い替える話ではありません。詰まっているのは、録音した後にそれを誰が読むかです。
会議を録音して、後で誰かが起こす。あるいは起こさないまま放置する。この作業は多くの会社で残っています。
今週、その前提が静かに変わりました。派手な発表ではないので見落としやすいのですが、中小企業に効き方が近いニュースです。
何が起きたか
Googleは2026年8月26日、音声認識に特化したモデル「Gemini 3.5 Transcribe」を公開プレビューとして公開しました(Intelligent transcription with Gemini 3.5 Transcribe)。
公式が挙げている内容は、次のとおりです。
- 85以上の言語を自動で判別して文字起こしする
- 単語誤り率(WER)は非ストリーミングで2.6%、ストリーミングで4.0%
- 録音ファイルでは話者の区別と単語単位のタイムスタンプに対応する(モデルのドキュメント)
- 言い直しやフィラー(「えーと」など)を落として整形する
そして価格です。Gemini APIの料金ページには、音声入力とテキスト出力を合わせた実効レートとして「~$0.005 per min(1分あたり約0.005ドル)」というGoogle自身の見積りが載っています。1時間の会議で0.3ドル前後という計算になります。
中小企業にとって何が変わるか
今日、何かを買い替える必要はありません。これは開発者向けのAPIで公開されたもので、まだ公開プレビューです。会社で使っている文字起こしツールを今すぐ乗り換える段階ではありません。
変わったのは、値段のほうです。
これまで文字起こしは「頼むと高いもの」でした。だから録音だけして、起こすのは重要な会議のときだけ、という運用になります。1時間で0.3ドルという水準は、その判断の前提を崩します。どれを起こすか選ぶ、という工程自体が要らなくなる。全部起こしてから、読むものを選べばいい。
精度の数字を、日本語の数字だと思わないこと
ただし、ここは正確に読んでください。
WER 2.6%は、日本語で測った数字ではありません。Googleは85以上の言語に対応するとしていますが、言語ごとの精度は公表していません。日本語の会議音声、それも複数人が同時に話す実際の音声で、この数字がそのまま出るとは限りません。
もう1つ。話者の区別は、録音ファイルでのみ動きます。リアルタイム配信の側では対応していないとドキュメントに明記されています。さらに、3人以上への話者の割り当ては「実験的」と書かれています。5人の会議録を全自動で綺麗に整える、という絵は、まだそこまで来ていません。
詰まっているのは、録音の後です
精度も価格も、もう会社が悩む場所ではありません。では、なぜ議事録は今も溜まらないのか。
だいたいの会社で止まっているのは、そこではないからです。起こしたテキストを誰が読むのか。読んで何を決めるのか。どこに置くのか。ここが決まっていないと、文字起こしが無料になっても、読まれないテキストが増えるだけで終わります。
文字起こしは、業務改善の入口としては筋がいい仕事です。毎日発生していて、判断が要らなくて、転記が絡んでいる。この3つが揃っています。ただし「起こす」ところまでが仕事ではありません。起こしたものが次の誰かの手間を減らして、初めて減ったと言えます。
「AIを入れた」ではなく「何が減ったか」で見ると、ここは見分けがつきます。文字起こしを自動化して、それでも同じ人が同じ時間だけ議事録を清書しているなら、減っていません。
いま何をすべきか/何もしなくていいか
| いまの状態 | やること |
|---|---|
| 文字起こしを使っていない | 何もしなくていい。ただし次の項目だけ考えておく |
| 有料の文字起こしツールを契約している | 次の更新時期を確認する。いま解約する必要はない |
| 議事録を人が手で起こしている | 自社の実際の音声で試す。公表値ではなく自社の音で判断する |
| 起こしたテキストが誰にも読まれていない | ツールの問題ではない。読む人と使い道を先に決める |
すぐに動くとしたら、契約更新の時期を1つ確認しておくことだけで十分です。音声認識の相場はこの数か月で明らかに動いています。次の更新の場面で、いま払っている金額が妥当かどうかを見る材料ができました。
そのうえで、自社の実際の音声で試してください。きれいな会議室の録音ではなく、いつもどおりの音です。現場の雑音、複数人の被り、社名や商品名などの固有名詞。公表されている精度が自社に当てはまるかは、そこでしか分かりません。
買い替えより先に決めること
もし議事録の自動化に手をつけるなら、順番があります。ツールを選ぶ前に、起こしたテキストの置き場所と、読む人を決める。
共有ドライブのフォルダを1つ決めて、誰が目を通すかを1人決める。それだけです。この2つが無いまま精度の高いツールを入れると、たいてい最初の2週間で止まります。道具が古いから使われないのではなく、行き先が無いから使われません。
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