議事録が読まれない会社の書き方|残すのは決まったことだけ
議事録が読まれないのは、読む人が知りたい「何が決まったか」が、発言の経過の中に埋もれているからです。
社内の打ち合わせなら、残すのは「決まったこと・誰が・いつまでに」の3行で足ります。決まらなかったことも1行で残します。
AIで全文を残すと書く手間は減りますが、読む手間は増えます。取締役会のように法律で形式が決まっている議事録とは分けて考えます。
週1回の定例会議が終わると、若手が1時間かけて議事録をまとめ、共有フォルダに置いてチャットで知らせる。既読はつくものの、誰からも返事はない。翌週の会議では「先週どうなったんだっけ」という話から始まり、同じ議論をもう一度する。議事録を開いた人に聞くと、「長くて最後まで読めなかった」と言われる。
最近は、会議を録音してAIに文字起こしと要約をさせる会社も増えました。書く手間はほとんどなくなりました。ところが、読まれないことは変わりません。むしろ、前より長くなったという声も聞きます。
「議事録 読まれない」で検索すると、議事録を速く作るツールや、見やすい書式の紹介が多く出てきます。この記事では、書く側の手間ではなく、読む側から見て議事録の何を変えればいいのかを書きます。
議事録が読まれないのは、知りたいことが埋もれているから
読む人が議事録を開く理由は、ほとんどの場合「何が決まったか」「自分は何をすればいいか」を知るためです。それが経過の中に埋もれていると、読まれなくなります。
よくある議事録は、会議の流れを時間の順に書いています。誰が何を言い、どんな意見が出て、どう話がまとまったか。書く側は、会議を正確に残そうとして丁寧に書きます。
ところが、会議に出られなかった人や、あとで確かめたい人が知りたいのは経過ではありません。結論と、自分に関係する作業だけです。結論が最後の段落にあり、しかも「〜の方向で検討することとなった」のようにぼかしてあると、読む人は最後まで読んでも何をすればいいか分かりません。それが2回続けば、次からは開かなくなります。
つまり、議事録が読まれないのは、読む人の意識が低いからではありません。読む人が知りたいことと、書いてあることの順番がずれているからです。この構造は、マニュアルが読まれない理由と同じです。手順書について書いたマニュアルが読まれない理由|読ませる工夫より、要らなくすると合わせて読むと、社内文書全体に当てはまることが分かります。
残すのは「決まったこと・誰が・いつまでに」の3行
社内の打ち合わせの議事録は、先頭に3行を置けば足ります。決まったこと、誰がやるか、いつまでにやるか。経過は書かなくても困りません。
3行の書き方
会議が終わったら、その場で次の3つを書き出します。
- 決まったこと:「〜を検討する」ではなく、「〜をやる」「〜はやらない」と言い切る
- 誰が:個人の名前を書く。「営業部」「みんなで」は書かない
- いつまでに:日付を書く。「なるべく早く」「次回まで」は避ける
決まったことが3つあれば、この3行が3組になります。それ以上増える会議は、1回で決めようとしていることが多すぎます。
決まらなかったことも1行で残す
もう1つ残しておくと役に立つのが、「決まらなかったこと」です。「価格は決まらず。〇〇さんが来週の会議までに案を2つ出す」のように、決まらなかった理由と、次に誰が動くかを1行で書きます。これがないと、翌週にまた最初から話し合うことになります。
会議の最後の5分で、全員で確かめる
3行は、会議のあとで書記が1人で書くより、会議の最後の5分で全員の前で書くほうが確実です。画面に映しながら「決まったのはこの3つでいいですか」と確かめれば、言った言わないもなくなります。会議が終わった時点で議事録もでき上がっているので、書記の1時間も要らなくなります。
大きな会社では、議事録の書式が決まっていて、出席者、議題、発言要旨、決定事項を全部埋める形になっていることがあります。人手の足りない会社がそれをまねする必要はありません。同じ悩みでも、会議の数や人の数で合うやり方は変わります。まずは3行から始め、足りないと感じたものだけ足していけば十分です。
「うちの会議、議事録を書いても誰も読んでいない」ところから、ご相談ください。いまの議事録を一緒に見て、残すものと残さないものを分けるところから始めます。
AIで全文を残すほど、読まれる議事録からは遠くなる
AIの文字起こしや要約は、書く手間を減らします。ただ、全文や長い要約をそのまま共有すると、読む手間はかえって増えます。
AIに会議の録音を渡すと、発言をすべて文字にして、要約までしてくれます。書記の負担がなくなるのは確かに大きな変化です。ただ、ここで起きやすいのが、「記録が全部あるから安心」という状態です。全文は検索すれば見つかりますが、全文を最初から読む人はいません。要約も、話の流れをそのまま縮めた形だと、結論がどこにあるかは分かりにくいままです。
AIに任せるなら、頼み方を変えます。「要約して」ではなく、「決まったこと、担当者、期限を表にして。決まらなかったことは別に挙げて」と頼みます。そのうえで、出てきた表を会議の最後に全員で確かめます。担当者や期限を決めるのは人です。AIが聞き間違えた名前や日付をそのまま流さないために、確かめる手間は残します。どこまで任せていいかの線の引き方はAIに任せていい仕事の見分け方|判断は新人と同じ基準でにまとめました。
もう1つ、全文の記録を残すかどうかは、会議ごとに分けて考えます。人事の話や取引先の条件を話す会議を、何でもAIに記録させていいとは限りません。
法律で決まった議事録は、別のものとして扱う
取締役会の議事録のように、法律で作成と保存が決まっているものは、3行に減らしません。社内の打ち合わせとは分けて扱います。
会社法 第369条第3項は、取締役会の議事について、法務省令で定めるところにより議事録を作成するよう定めています。また第371条第1項では、取締役会設置会社は取締役会の日から10年間、議事録を本店に備え置かなければならないとしています(e-Gov法令検索 会社法)。こうした議事録は、書く項目も残し方も決まっているので、自社で勝手に削ってはいけません。書き方に迷う場合は、司法書士や顧問の専門家に確かめてください。
社内の定例会議や打ち合わせの記録には、こうした決まりはありません。「議事録」という同じ名前で呼んでいるせいで、社内の打ち合わせまで取締役会と同じ重さで書いている会社があります。名前を「決定メモ」などに変えるだけでも、書く人の負担は軽くなります。
今日からやること
| # | やること | 目安 |
|---|---|---|
| 1 | 直近の議事録を3つ開き、「決まったこと」が何行目にあるかを確かめる | 今日 |
| 2 | 社内の会議の記録と、法律で決まった議事録(取締役会など)を分けて書き出す | 今日 |
| 3 | 次の定例会議の最後の5分で、決まったこと・誰が・いつまでにを画面に書いて全員で確かめる | 今週 |
| 4 | 決まらなかったことを1行で書き、次に誰が動くかを添える | 今週 |
| 5 | AIを使っているなら、頼み方を「要約して」から「決定事項・担当・期限を表にして」に変える | 今週 |
| 6 | 1か月後、翌週の会議で「先週どうなった」から始まる回数が減ったかを振り返る | 1か月後 |
よくある質問
議事録に発言の経過を残さないと、あとで困りませんか。
社内の打ち合わせなら、困ることはほとんどありません。あとで「なぜそう決めたか」を知りたくなるのは、判断の理由が分からないときです。その場合は、決まったことの横に理由を1行だけ添えます。発言を全部残す必要はありません。
AIの文字起こしをそのまま議事録にしてはいけませんか。
検索用の記録として残すのは構いません。ただ、共有するのは決まったこと・担当・期限の3行にします。全文をそのまま共有すると、読む人が結論を探す手間が増えます。担当者の名前や期限は、AIの出力を会議の場で確かめてから使います。
取締役会の議事録も3行で済ませていいですか。
いけません。取締役会の議事録は会社法で作成と保存が定められています。社内の打ち合わせの記録とは分けて扱い、書き方は司法書士や顧問の専門家に確かめてください。
書記を決めないと、3行も誰も書かないのではないですか。
会議の最後の5分を「3行を書く時間」として最初から予定に入れます。書くのは司会でも参加者の誰かでも構いません。大事なのは会議が終わる前に全員で確かめることで、誰が書くかは会社ごとに決めて大丈夫です。
まとめ
議事録が読まれないのは、読む人が知りたい「何が決まったか」が、発言の経過の中に埋もれているからです。社内の打ち合わせなら、決まったこと・誰が・いつまでにの3行を、会議の最後の5分で全員で確かめれば足ります。決まらなかったことも1行残します。取締役会のように法律で決まった議事録は、別のものとして扱います。
AIで議事録を作れるようになっても、「AIで議事録を自動化した」は何も意味しません。翌週の会議で同じ話をくり返す回数が減ったか。それだけが意味を持ちます。
読まれない文書の考え方はマニュアルが読まれない理由|読ませる工夫より、要らなくするに、道具を続けるかやめるかの判断はツールが定着しない|直すか捨てるかの決め方に、AIに任せる線引きはAIに任せていい仕事の見分け方|判断は新人と同じ基準でに書きました。
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