SaaSが使われない3つの理由|導入前に決める1行
原因はITリテラシーではなく、構造にあります。
①なくすものを決めずに入れている ②入力する人と得をする人が違う ③前のやり方がまだ生きている。
この3つのどれかに当たっていないか、先に確認してください。
契約はしている。ログインもできる。研修もやった。でも、誰も使っていない。結局エクセルとメールで回っていて、月額だけが引き落とされ続けている。
相談の場では、たいてい「うちの社員がITに弱くて」と言われます。でも、ほぼ違います。
同じ会社の同じ社員が、LINEは使いこなしています。スマホの決済も使っています。ITに弱いのではなく、そのツールを使う理由が無いだけです。
理由1:「何を減らすか」を決めずに入れている
導入の目的が「効率化」で止まっていると、成功も失敗も判定できなくなります。
これが一番多く、一番厄介です。
効率化は目的にならない
効率化は結果です。目的にすると、入れた時点で達成した気分になります。 そこから先、誰も追いかけません。
3か月後に「あれ、使われてる?」と誰かが気づいた時には、もう手遅れです。現場には元のやり方が戻っています。
決めるべきは「なくすもの」
導入前に、この形の文章を1つ作ってください。
「〇〇が無くなったら成功」
たとえばこうです。
- 受注メールから受注管理表への転記が無くなったら成功
- 在庫を確認する電話が無くなったら成功
- 月末の集計にかかっている半日が無くなったら成功
なくすものが1つ決まっていれば、成功したかどうかを誰でも判定できます。 減っていなければ失敗。それだけです。
逆に、ここが空欄のまま導入すると、成功も失敗も判定できません。判定できないものは、放置されます。
導入前に1行書くだけです。この1行があるかどうかで、その後の運命がかなり変わります。
理由2:入力する人と、得をする人が違う
手間が増える人と、メリットを受け取る人が別だと、入力は必ず形骸化します。
これが一番根深く、一番よく見落とされます。
構造を見てみます
たとえば案件管理のツールを入れたとします。
- 入力するのは — 現場の営業担当
- そのデータで得をするのは — 進捗を把握したい管理側
現場の担当者には、何のメリットもありません。 手間だけが増えています。
この構造がある限り、「ちゃんと入力してください」と言い続けることになります。言われた側は「また仕事が増えた」と思っています。数か月で入力は形骸化し、データは穴だらけになり、穴だらけのデータは誰も見なくなります。
対処は2つしかありません
① 入力を、その人の仕事の「ついで」にする
別画面を開いて入力させるのではなく、もともとやっている作業の中に入力が含まれている状態をつくります。
電話しながら開いている画面が、そのまま記録になる。見積を作ったら、その内容が自動で案件情報になる。「入力する」という独立した作業を発生させないのが理想です。
② 入力した人が、最初に得をするようにする
順番が大事です。
入力すると自分の探し物が早くなる。過去のやりとりがすぐ出てくる。報告書が自動でできる。まず入力者が楽になり、管理側のメリットはその後についてくる。
この順番が逆だと、絶対に定着しません。
理由3:前のやり方が、まだ生きている
新旧が併存している状態は、片方ではなく両方のデータを信用できなくします。
人は慣れている方を使います
これは意思の弱さではなく、正常な判断です。
急いでいる時に、操作を思い出さないといけない方を選ぶ理由がありません。締切が迫っていれば、誰でも慣れた方を開きます。
二重運用が始まると、両方死にます
新しいツールにも入っている。エクセルにも入っている。しかも内容が微妙に違う。
こうなるとどちらのデータも信用できなくなります。 そして最終的に「エクセルの方が正しい」となって、ツールは静かに死にます。
切るなら切る
新しい方に寄せるなら、古い方をいつ止めるかを、導入と同時に決めてください。
「しばらく併用して、慣れたら移行」は、ほぼ失敗します。慣れる前に、併用が日常になるからです。
どうしても併用が必要なら、どちらが正なのかだけは、はっきり決めてください。 曖昧なまま両方を生かしておくのが、一番コストの高い選択です。
AIツールでも、まったく同じです
「AIを導入した」という事実には、何の意味もありません。
むしろAIの方が危険です。導入したこと自体が目的になりやすいから。導入したという事実に満足してしまい、何が減ったかを誰も見ない。
意味を持つのは、何が減ったかだけです。
今日からやること
いま検討しているツール、あるいは既に入れて使われていないツールがあれば、3つ確認してみてください。
| # | 確認すること | 答えられなければ |
|---|---|---|
| 1 | なくすものが決まっているか | 導入しても判定できません |
| 2 | 手間が増える人と、得をする人が同じか | 数か月で形骸化します |
| 3 | 前のやり方を、いつ切るか決まっているか | 二重運用で両方死にます |
3つとも答えられるなら、そのツールはたぶん使われます。
1つでも空欄なら、そこを埋めてからの方が早いです。 ツールを選び直すより、この3つを詰める方が、成功率がずっと上がります。
よくある質問
研修をやれば定着しますか
研修だけでは定着しません。 使われない原因が「操作が分からない」ことなら研修で解決しますが、本記事の3つのうち2つ目と3つ目は、研修では直りません。手間が増える構造も、前のやり方が残っている状態も、操作を教えれば消えるものではないからです。
導入して何か月使われなければ失敗と判断すべきですか
期間ではなく「なくすと決めたものが減ったか」で判断してください。 3か月経っても減っていないなら、期間を延ばしても減りません。逆に1か月で減っているなら、その時点で成功です。
高いツールを入れれば使われますか
金額と定着率は関係ありません。むしろ高いツールほど機能が多く、現場が使わない機能に埋もれて、必要な操作にたどり着けなくなることがあります。
一度使われなくなったツールを、もう一度定着させられますか
できます。ただし、同じやり方で再開しても同じ結果になります。 3つのうちどれで失敗したかを特定してから再開してください。特定せずに「今度こそ」と号令をかけるのが、一番よくないパターンです。
現場に反対されている状態でも導入すべきですか
反対の理由を先に聞いてください。多くの場合、反対しているのではなく「また手間が増えるのでは」と警戒しているだけです。理由2の構造を先に直せば、反対は消えることがあります。
まとめ
使われない原因は、たいてい人ではなく構造の側にあります。
- なくすものを1行で決める — これがないと成功も失敗も判定できない
- 入力する人が最初に得をする形にする — 順番を逆にしない
- 前のやり方をいつ切るか決める — 併用は両方を殺す
どれも導入前に決められることです。ツール選びより、ここを詰める方が効きます。
どこから手をつけるか分からない場合は、ご相談ください。 いまのやり方を伺うところから始めます。
どこから手をつけるか分からない場合は、ご相談ください。いまのやり方を伺うところから始めます。ご相談とお見積りに費用はいただきません。
相談する