資料作成に時間がかかる理由|誰が何を決めるかを先に書く
資料作成に時間がかかるのは、スライドの見た目を整える手間より、誰が読んで何を決める資料かが決まらないまま作り始め、見せるたびに作り直しになるからです。
AIで速く作れるようになっても、中身が決まっていなければ、直しの回数は減りません。
作る前に「誰が読み、何を決め、そのために何が要るか」を1行で書き、依頼した人と合わせてから作り始めてください。AIはその後の清書に使います。
上司から「来週の会議用に、新しい取り組みの資料をまとめておいて」と頼まれます。とりあえずスライドを開き、表紙を作り、背景を説明するページから書き始めます。半日かけて10枚ほどにまとめて見せると、「これだと何を決めればいいのか分からない」と言われます。構成を変えて作り直し、もう一度見せると、今度は「この数字はどこから持ってきたの」と聞かれ、材料を集め直すことになります。会議の前日まで、同じ資料を何度も直しています。
「資料作成 時間かかる」で検索すると、スライドを速く作るコツや、AIで資料を作るツールの紹介が多く出てきます。この記事では、その手前の話をします。時間を食っているのは見た目を整える作業ではなく、中身が決まらないまま作り始めることだという見立てと、AIに作らせる前に決めておく順番です。
資料作成の時間は、作り直しの回数で決まる
資料作成にかかる時間の大半は、スライドを作る時間ではなく、見せた後に作り直す時間です。最初に中身が合っていれば、作り直しがまとめて減ります。
資料ができあがるまでの流れを分けると、次のようになります。
- 資料を頼まれる
- 何を書くか考える
- 材料を集める
- スライドや文書の形にする
- 頼んだ人に見せる
- 直す。中身がずれていれば、2に戻る
手間に感じるのは4の形にする作業ですが、本当に時間を使っているのは6から2に戻るところです。表やグラフをきれいに整えても、見せた後に「言いたいことが違う」と言われれば、整えた分はやり直しになります。4を速くする工夫は、6で戻る回数が多いうちは効きません。
見積書のように書式が決まっている書類なら、時間を食うのは確認待ちです。見積書の作成に時間がかかる理由|遅いのは入力より確認待ちにそう書きました。会議資料や提案書のように形が決まっていない資料は、それに加えて、何を書くかの段階で迷う時間があります。その迷いを生んでいるのは、次の3つの原因です。
中身が決まらない3つの原因
中身が決まらない原因は、誰が読んで何を決める資料かが書かれていないこと、材料が揃う前に作り始めること、直しの基準が見る人の頭の中にしかないことの3つです。どれもスライドの作り方とは関係がありません。
誰が読んで何を決める資料かが書かれていない
「資料をまとめておいて」という頼み方には、誰に見せるのか、見た人に何を決めてもらうのかが入っていません。作る人は分からないまま、とりあえず背景から説明する資料を作ります。頼んだ人のほうは、会議で「やるかやらないか」を決めたかったのかもしれません。この食い違いは、作った資料を見せるまで表に出ません。
材料が揃う前に作り始める
何を決める資料かが分かっていても、判断に要る数字や事実が手元に無いまま作り始めると、途中で手が止まります。止まったところを仮の言葉で埋めて先に進むと、見せたときに「ここの根拠は」と聞かれ、材料集めからやり直しになります。
直しの基準が見る人の頭の中にしかない
見せるたびに違う指摘が返ってくるのは、見る人が悪いのではなく、何を満たせば完成なのかが最初に決まっていないからです。基準が頭の中にしかないと、見る人は資料を見てから基準を思いつきます。作る人は、出してみるまで何が足りないか分かりません。
毎回同じ指摘が出る資料なら、指摘の中身はそのまま型にできます。日報が意味がないと言われる理由|読む人がいないならやめていいでは、読む人がいない定型の報告はやめてよいと書きました。逆に、読む人がはっきりしている資料は、その人が毎回聞くことを先に書いておけば、直しの往復が減ります。
作る前に1行で書く「誰が・何を決める・何が要るか」
スライドを開く前に、誰が読み、何を決め、そのために何が要るかを1行で書き、頼んだ人と合わせます。これで、見せた後に「言いたいことが違う」と戻るのを防げます。
1行にすると、たとえば「社長が、来期にこの取り組みを始めるかを決める。要るのは、かかる費用と、やめたときに失うもの」となります。書き出すことは3つです。
| 書くこと | 例 | 防げる手戻り |
|---|---|---|
| 誰が読むか | 社長/取引先の担当者/現場の作業者 | 読む人に合わない書き方での作り直し |
| 読んだ人に何を決めてもらうか | 始めるかやめるか/どちらの案にするか/手順を覚えてもらう | 「何を決めればいいのか分からない」での作り直し |
| 決めるために何が要るか | 費用、期間、やめたときに失うもの、ほかの案との違い | 「この根拠は」での材料集め直し |
いちばん効くのは、この1行を作り始める前に、頼んだ人に見せることです。口頭で「こういう資料でいいですか」と5分確かめるだけで、半日かけて作った資料が見当違いだった、という事態を避けられます。頼んだ人のほうも、1行を見て初めて、自分が何を決めたかったのかに気づくことがあります。
1行が決まったら、要る材料を揃えてから形にします。材料が揃わないなら、その項目は「未確認」と書いたまま見せて構いません。仮の言葉で埋めるより、何が足りないかが見えるほうが、頼んだ人も判断しやすくなります。
大きな会社なら、資料の型や社内のテンプレートが決まっていて、決裁に要る項目も規程で決まっていることがあります。人手の足りない会社に、同じ型をそのまま持ち込む必要はありません。決める人が社長1人なら、社長が毎回聞くことを3つ書き出すだけで十分です。何を書けば通るかは、会社ごと、読む人ごとに違って構いません。
「うちの資料なら、何を1行に書けば直しが減るのか」から、ご相談ください。いま作り直しになっている資料を1つ持ってきていただき、どこで中身がずれたのかを一緒に探すところから始めます。
AIは中身が決まった後の清書係にする
AIで資料を作る機能は、中身が決まった後に使うと効きます。誰が何を決める資料かが決まっていないままAIに作らせると、それらしい資料が速くできるだけで、見せた後の作り直しは残ります。
いま使っている資料作成のソフトには、AIでスライドを作る機能がすでに入っていることがあります。PowerPoint の Copilot は、作りたい内容を伝えると先にアウトラインを作り、それをチャットで直してからスライドを作る流れになっています。アウトラインを作る前に、プレゼンテーションの対象者は誰か、どんな見た目にしたいかを Copilot のほうから聞いてくることもあります。Word の文書から資料を作ることもでき、Word のスタイルで文書を整理しておくと、Copilot が構造を読み取りやすくなると書かれています。そのうえで、出力はAIが作ったものであり、人による確認と編集が必要だと明記されています(Microsoft サポート「PowerPoint の Copilot を使用して新しいプレゼンテーションを作成する」)。
Google スライドの Gemini も、ドライブにあるファイルを指定して、その内容をもとにスライドを作れます。ただし一度に作れるのは1枚ずつで、使うには対象となる Google Workspace か Google AI のプランへの登録が必要です。このヘルプでは、現在はパソコンの英語でのみ使える機能とされています(Google ドキュメント エディタ ヘルプ「Gemini in Google スライドでスライドを生成する」)。
どちらも、AIが聞いてくることは前の章の1行とほとんど同じです。誰に見せるのか、何を伝えたいのか。ここを答えられないまま「いい感じにまとめて」と頼めば、AIは背景から説明する、無難な資料を作ります。見た目は整っているので、作った本人は進んだ気になりますが、頼んだ人に見せれば同じ指摘が返ってきます。
逆に、1行と材料が揃っていれば、AIはかなり役に立ちます。1行と集めた材料を渡して、構成案と下書きを作らせ、人は中身が合っているかだけを見ればよくなります。AIの下書きに出てくる数字や固有名詞は、渡した材料と合っているかを必ず確かめてください。作った資料を社外の人に共有する機能もあるので、社外へ出す前の確認についてはClaudeの資料作成が全プランに|先に見るのは社外への共有に書きました。
今日からやること
| やること | 目安 | ポイント |
|---|---|---|
| 最近作り直しになった資料を1つ選び、何回見せて何回直したかを数える | 10分 | 見た目の直しと、中身の直しを分けて数える |
| 次に頼まれた資料で、作り始める前に1行を書く | 5分 | 誰が読むか・何を決めるか・何が要るか |
| その1行を、頼んだ人に口頭で確かめる | 5分 | スライドを開く前に行う |
| 要る材料を揃え、揃わないものは「未確認」と書く | 資料による | 仮の言葉で埋めない |
| 毎回同じ指摘が出るなら、その指摘を1行の型に足す | 10分 | 読む人が毎回聞くことを先に書いておく |
最初からAIの資料作成機能を選ばなくて構いません。作り始める前に1行を書く、の1つから始めれば十分です。
よくある質問
AIで資料を作れば、資料作成の時間は減りますか。
形にする時間は減ります。ただし、誰が読み何を決める資料かが決まっていないままだと、見せた後の作り直しは減りません。AIに頼む前に1行を書き、頼んだ人と合わせてから使ってください。
頼んだ人が忙しくて、1行を確かめる時間がもらえません。
1行をチャットやメールで送り、「この方向で作ります」とだけ伝えてください。返事が無くても、作った資料を見せたときに、最初に何を確かめたかを示せます。半日かけて作ってから見当違いだと分かるより、手戻りは小さくなります。
スライドの枚数は何枚くらいがよいですか。
決まった枚数はありません。読む人が決めるために要ることが揃っていれば、枚数は少ないほど読まれます。1行に書いた「要るもの」が入っているかで、足りているかを判断してください。
まとめ
資料作成に時間がかかるのは、スライドの見た目を整える手間より、中身が決まらないまま作り始め、見せるたびに作り直しになるからです。誰が読んで何を決める資料かが書かれていないこと、材料が揃う前に作り始めること、直しの基準が見る人の頭の中にしかないことが、その作り直しを生んでいます。
作る前に、誰が読み、何を決め、そのために何が要るかを1行で書き、頼んだ人と合わせます。AIの資料作成機能は、その1行と材料が揃ってから、清書に使います。
「AIで資料を作れるようにした」ことに意味はありません。1つの資料ができあがるまでの作り直しが、何回から何回に減ったかを見てください。
どこから手をつけるか分からない場合は、ご相談ください。いまのやり方を伺うところから始めます。ご相談とお見積りに費用はいただきません。
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