AI導入補助金に1年後の賃上げ要件|先に見るのは給与の記録
デジタル化・AI導入補助金の事務局が10月9日、第7次公募からの制度変更を出しました。
通常枠では、1人当たりの給与を「1年後に」一定以上上げることが申請の条件に加わります。これまでは3年間の平均で見る条件でした。
申請するかどうかを決める前に、自社の給与の記録で今年の水準を確かめ、1年後に上げられる見込みがあるかを先に見ます。
AIや業務ソフトの導入費を国が一部負担する「デジタル化・AI導入補助金2026」の条件が、第7次公募から変わります。事務局が10月9日に知らせました。従業員20人の会社に関係するのは、給与を上げる約束が「3年の平均」だけでなく「1年後」でも問われるようになったことです。補助金を使うかどうかは、ツールの見積もりより先に、自社の給与の記録を見て決める話になりました。
今日やること 申請を考えている会社は、1つだけです。今年度の「1人当たり給与支給総額」を出して、来年度に上げられる見込みがあるかを確かめる。見込みが立たないなら、150万円以上の申請や、過去に交付を受けた会社の申請は見送る判断もあります。いま申請の準備をしていない会社は、何もしなくて構いません。
何が起きたか
中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局は2026年10月9日、第7次公募回以降の制度変更を公表しました(デジタル化・AI導入補助金2026:第7次公募回以降における制度変更のお知らせ)。通常枠の公募要領も同じ日付で新しくなっています(デジタル化・AI導入補助金2026:公募要領(通常枠・第7回公募〜))。通常枠について、前の要領と本文を突き合わせると、変わったのは次の3点です。
- 1人当たり給与支給総額(パートを含む全従業員)に、「1年後に上げること」という申請の条件が加わった。これまでは3年間の平均の伸びだけが条件だった
- 給与の伸びを測る基準の年度が、交付申請日が属する事業年度と書かれた
- 最低賃金に近い賃金の従業員が多い会社の補助率(2/3以内)や、加点の条件が、令和8年度の最低賃金の改定に合わせて更新された
なお、いま受け付けている第6次の締切は10月30日(金)17:00です。第7次の日程はまだ出ていません(デジタル化・AI導入補助金2026:事業スケジュール)。
中小企業にとって何が変わるか
「3年でならせばいい」が使えなくなった
これまでの条件は、3年間の平均で給与の伸びを見るものでした。1年目は据え置き、2年目と3年目で取り返す、という計画も立てられました。新しい条件では、それに加えて1年後の時点で決められた率を超えている必要があります。
小さな会社は、1年ごとの売上の振れが大きいものです。大口の取引先が1社減れば、その年の昇給は止めたくなります。3年でならせる余地があるかどうかは、従業員20人の会社にとって小さくない違いです。
うちは当てはまるか
給与の条件は、申請する額と、過去に交付を受けたかどうかで変わります。新しい公募要領の一覧表を、通常枠に絞ってまとめると次のとおりです。
| 申請する補助額 | 過去(IT導入補助金2022〜2025)の交付 | 1年後の給与の条件 | 3年間の平均の条件 |
|---|---|---|---|
| 150万円未満 | 受けていない | なし | なし(加点のみ) |
| 150万円未満 | 受けた | 3.5%以上 | 3.5%以上 |
| 150万円以上 | 受けていない | 3%以上 | 3%以上 |
| 150万円以上 | 受けた | 3.5%以上 | 3.5%以上 |
150万円以上の申請では、これに加えて、社内でいちばん低い時給を地域別最低賃金より30円以上高くする条件と、賃上げの計画を従業員に伝えておく条件があります。医療・介護・福祉の事業者や学校などは、給与の条件の対象外です。
初めて申請する会社が150万円未満で申し込むなら、今回の変更で増える条件はありません。影響を受けるのは、150万円以上を申請する会社と、以前にIT導入補助金を受けたことがある会社です。
基準になる「今年度」に注意する
給与の伸びは、申請した日が含まれる事業年度を基準に測ります。今期すでに昇給した会社は、その上がった水準が基準になり、そこからさらに1年で率を超える必要があります。期の途中で申請するなら、決算までの残りの月の給与も含めて今年度の数字を見込んでおく必要があります。
守れなかったときに何が起きるか
通常枠の公募要領には、給与の伸びの条件を達成できなかった場合、補助金の全額の返還を求める場合があると書かれています。判定は事業計画が終わる時点(3年度目)で行う、という書き方です。ただし、付加価値が増えず、3年のうち過半数の年で営業赤字だった場合や、天災など会社の責任ではない理由がある場合は、返還を求めないとされています。
よくある誤解:「補助金はツール代が半分になる話」
補助金は、ツールの代金を割り引く制度ではありません。3年間の事業計画と、その間の給与の約束を引き受けて受け取るお金です。今回の変更で、その約束が1年目から問われるようになりました。
ここで考えたいのは順番です。AIを入れて仕事の時間が減り、その分で売上や利益が増えれば、給与を上げる元手ができます。減った時間を測る仕組みが無いまま補助金だけを当てにすると、1年後に「AIは入ったが、給与を上げる元手は増えていない」となりかねません。何が減ったかを言えないうちは、補助金を使わずに小さく始めるほうが安全です。
いま何をすべきか
申請を考えている会社は、次の順で確かめてください。
- 自社がどの行に当たるかを決める。申請額が150万円を超えるか、以前にIT導入補助金を受けたかの2点で、上の表のどこかが決まります
- 今年度の1人当たり給与支給総額を出す。給料・賞与・手当の合計を従業員数で割ります(役員報酬は除き、パートは正社員の時間に換算)。数え方は要領に細かく書かれているので、税理士か社労士に一度見てもらうのが確実です
- 1年後に条件の率を超えられるかを、売上の見込みと並べて確かめる。超えられない見込みなら、申請額を150万円未満に抑えるか、申請自体を見送ります
条件に当てはまらない会社や、いま申請の準備をしていない会社は、何もしなくて構いません。
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「予算が無いから補助金を探す」で止まっている会社は、中小企業でDXが進まない理由を先に読んでください。予算が出ないのは、何が減るのかを誰も言えていないからだ、という話をしています。補助金の条件が厳しくなった今は、なおさら先にそこを決める意味があります。
1年後に給与を上げる元手があるかは、AIで何が減ったかを測れるかどうかで決まります。測り方はAI導入の効果測定|見るのは減った時間だけにまとめました。補助金の申請書に書く数字も、ここで測った時間が土台になります。
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