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経費精算の手間が減らない理由|システムより先にルールを削る

経費精算の手間が減らない理由|システムより先にルールを削る
この記事の結論

経費精算の手間は、入力が遅いことより、手入力・領収書の添付・上長の押印と、重なったルールの数から来ています。

面倒だから申請せずに自腹を切る社員がいる会社では、経費の記録そのものが抜け落ちています。

精算システムやAIを選ぶ前に、法律で要るルールと会社が足したルールを分け、後者から削ります。道具はその後で決めます。

月末、財布の中にレシートがたまっている。駐車場代、取引先へ持っていった手土産、急ぎで買った文房具。精算しなければと思いながら、申請画面を開いて日付と金額を打ち込み、レシートを撮って添付し、紙の原本は台紙に貼って上司の印をもらう。1件数百円のために、それを全部やるのが面倒で、結局「まあいいか」と自分で払ってしまう。

「経費精算 手間」で検索すると、精算システムの比較や、領収書をスマホで読み取る機能の紹介がたくさん出てきます。どれも役に立ちます。ただ、道具を入れても手間が減った実感がないなら、手間を生んでいる場所が別にあるのかもしれません。

この記事では、経費精算の手間がどこから来ているのかと、システムやAIを選ぶ前に減らしておくものを書きます。

経費精算の手間は、入力の速さより「ルールの重なり」から来ている

精算が面倒だと感じる人が挙げるのは、手入力・領収書の添付・上長の押印です。1つずつは小さくても、全部を1件ごとにやるから重くなります。

経費精算サービスを提供するSansan株式会社が、20〜50代の会社員1000名に行った調査(2024年7月実施)があります。立替経費に課題を感じていると答えた人は72.8%でした。課題の理由で最も多かったのは「精算処理が面倒」(33.9%)、次いで「領収書の管理が面倒」(31.4%)です(Sansan株式会社「経費精算業務に関する実態調査」)。

「精算処理が面倒」と答えた人に、具体的に何が面倒かを聞いた結果は次のとおりです。

精算サービスの会社の調査なので、課題が大きく出やすい面はあります。それを差し引いても、並んでいる中身ははっきりしています。面倒なのは「打つ」「貼る」「印をもらう」の3つで、どれも1件ごとに繰り返す手順です。打つ速さを上げても、貼る作業と印をもらう作業は残ります。

「面倒だから自腹」は、会社から見えない損になっている

精算が面倒な会社では、社員が申請をやめて自分で払います。会社からは手間が見えなくなるだけで、経費の記録が抜け落ちています。

同じ調査では、立て替えた経費を精算せずに自腹で払った経験がある人が52.2%いました。その理由で最も多かったのは「精算処理が面倒だから申請しなかった」(40.8%)です。次いで「精算処理を忘れていた」(33.9%)、「領収書を紛失した」(31.2%)が続きます。

経営者から見ると、自腹で払ってくれるなら会社の出費は減っているように見えます。実際には、次の3つが起きています。

立替経費の精算が通常業務の妨げになっていると答えた人は46.2%で、20代では62.0%でした。月の立替件数も20代が平均28.4件と最も多くなっています。若い社員ほど件数が多く、そのぶん手間も重くのしかかっています。

削れるルールの多くは、法律ではなく社内の決まり

「領収書の原本は台紙に貼って保管」「上長の印がないと受け付けない」の多くは、会社が昔に決めた手順です。法律で要るものと分けると、削れるものが見えてきます。

経費精算のルールが増える理由は、たいてい「税務調査で困らないように」です。ただ、その前提になっている法律は、ここ数年で大きく変わっています。

国税庁の資料によると、令和3年度の税制改正で、令和4年1月1日以後に保存する書類については、スキャナ保存の事前承認の制度が廃止されました。紙の段階での改ざんを防ぐために求められていた、社内での相互けん制や定期的な検査の要件(適正事務処理要件)も廃止されています。スキャナで読み取り、紙と同じ内容かを確かめた後であれば、紙の原本はすぐに廃棄してかまわないとされています(国税庁「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」)。

つまり、「原本を台紙に貼って経理に回す」「月に一度、原本と画面を見比べる」といった手順は、以前の要件に合わせて作られたまま残っている可能性があります。もちろん、スキャナ保存には今も入力の期限(受け取りから最長でおよそ2か月)や、検索できる形で保存するといった要件があります。自社に当てはめるときは、顧問の税理士に確かめてください。

手元の精算ルールを、次の3つに分けてみてください。

  1. 法律で要るもの:領収書の内容を残す、決められた期間保存する、など。ここは削らない
  2. 会社が決めたもの:上長の押印、台紙への貼り付け、紙の原本の回収など。理由を確かめて、要らなければ削る
  3. 誰も理由を知らないもの:「前からそうしている」としか説明できない手順。まず止めてみて、困るかどうかを見る

大きな会社なら、経理部門が規程を見直し、監査法人と相談しながら手順を変えていきます。人手の足りない会社では、同じ進め方はできません。そのかわり、社長と経理担当の2人が「これは要るか」を決めれば、その日から変えられます。承認の段数そのものを減らす考え方は、承認フローが長い会社の減らし方|差し戻しを数えるに書きました。

ルールを削ってから、精算システムやAIを選ぶ

道具はルールの後です。手順が多いまま精算システムやAIを入れても、多い手順が画面の上に移るだけです。

いまの精算システムの多くは、レシートを撮ると日付や金額を読み取る機能を持っています。生成AIに領収書の画像を渡して、内容を書き出させることもできます。調査で最も面倒とされた「手入力」は、道具で減らせる部分です。

ただし、道具が減らせるのは「打つ」作業だけです。「紙の原本を台紙に貼る」「上長の印をもらう」というルールが残っていれば、レシートを撮ったあとで同じ紙を回すことになります。入力は速くなったのに精算全体は楽にならない、という会社の多くはここで止まっています。何を紙で残し、何をやめるかを先に決める考え方は、ペーパーレスが進まない理由|先に決めるのは「残す紙」に書きました。

順番は次のとおりです。

  1. いまの手順を書き出す:申請から支払いまで、誰が何をしているかを1枚に並べる
  2. ルールを3つに分けて削る:法律で要るもの以外は、理由を確かめる
  3. 残った手順に合う道具を選ぶ:手入力が残るなら読み取り機能、立て替えそのものを減らすなら法人カードなど

道具を選ぶ段階になると、機能の多さで比べたくなります。けれども、比べるべきは「削った後の手順に合うか」だけです。社員が精算システムを意識しないまま、月末にレシートを撮って終わる。その状態に近づくかどうかで選んでください。精算の画面からほかのシステムへ数字を写し直している場合は、転記作業の無駄をなくす|自動化の前に、消す転記を分けるも参考になります。

「どのルールなら削ってよいのか分からない」ところから、ご相談ください。いまの精算の手順を一緒に書き出し、残すルールと削るルールを分けるところから始めます。

今日からやること

やること目安ポイント
申請から支払いまでの手順を1枚に書き出す30分社員・上長・経理それぞれが何をしているか。画面の操作と紙の動きの両方
手順を「法律で要る」「会社が決めた」「理由不明」に分ける20分迷ったものは「理由不明」に入れる
「理由不明」から1つ選んで止める今週1か月止めて、困ったことがあったかだけを見る
社員に「精算せずに自分で払ったことがあるか」を聞く10分責めずに聞く。あるなら、面倒だった手順を1つ挙げてもらう
顧問の税理士に、紙の原本の扱いを確かめる1回スキャナ保存の要件に合っているかを確かめてから、原本の回収をやめる

最初から精算の仕組みを全部作り直そうとすると、それだけで止まります。理由の分からないルールを1つ止める。そこから始めれば、残りは様子を見ながら削っていけます。

よくある質問

経費精算システムを入れれば、手間は減りますか。

手入力の手間は減ります。ただ、上長の押印や紙の原本の回収といった社内のルールが残っていると、精算全体の手間はあまり変わりません。システムを選ぶ前に、いまの手順のうち削れるものを削っておくと、導入後に効き目が出やすくなります。

少額の経費を社員が自腹で払っているのは、問題ですか。

会社の出費が減っているように見えても、経費の記録が欠け、社員の不満もたまります。申請しない理由の多くは「精算処理が面倒だから」です。自腹をやめてもらう呼びかけより先に、申請の手順を軽くするほうが効きます。

領収書の紙の原本は、いつまで保管しなければいけませんか。

電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件を満たして読み取り、紙と同じ内容かを確かめた後であれば、紙の原本はすぐに廃棄してかまわないとされています(国税庁「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」 問3)。ただし、入力の期限を過ぎた場合など、紙も残す必要がある場合があります。自社の運用が要件に合っているかは、顧問の税理士に確かめてください。

AIで領収書を読み取らせても大丈夫ですか。

日付や金額を書き出させる使い方はできます。読み取りの誤りはありうるので、金額だけは人が見て確かめてください。また、社外のAIサービスに領収書の画像を渡すときは、取引先の名前や個人の情報が含まれることを前提に、使ってよいサービスを社内で決めておきます。

まとめ

経費精算の手間は、入力の遅さよりも、手入力・領収書の添付・上長の押印と、1件ごとに重なるルールの数から来ています。面倒だから申請せずに自腹で払う社員がいるなら、手間は見えないところに移っているだけです。

精算システムやAIを選ぶ前に、手元のルールを「法律で要るもの」「会社が決めたもの」「理由の分からないもの」に分けて、後ろの2つから削ります。どのルールを残すかは、会社ごとに違います。自社でいちばん面倒がられている手順から手をつければ十分です。

「経費精算システムを入れた」ことに意味はありません。社員が精算にかける手間と、申請されずに消えていく経費がどれだけ減ったかを見てください。

承認の段数を減らす考え方は承認フローが長い会社の減らし方|差し戻しを数えるに、紙を残す書類の決め方はペーパーレスが進まない理由|先に決めるのは「残す紙」に、システム間の写し直しを減らす考え方は転記作業の無駄をなくす|自動化の前に、消す転記を分けるに書きました。

どこから手をつけるか分からない場合は、ご相談ください。いまのやり方を伺うところから始めます。ご相談とお見積りに費用はいただきません。

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この記事を書いた人
清水 飛鳥株式会社Raven 代表

中小企業と個人事業主の業務を、その会社に合った形で仕組みに変える会社を経営しています。

本記事はAIを用いて作成し、公開前に内容を確認しています。