社内で情報共有ができない原因|書く人が得をしない構造
社内で情報共有ができないのは、社員の意識やツールの問題より、書く人が得をしない構造が原因です。書く手間は今かかり、得をするのは後で読む別の人です。
チャットツールを入れても、この構造は変わりません。書く場所が増えるだけで、書く理由は増えません。
直す順番は、書く手間を減らす、書いた人が得をする置き方にする、書かなくても残る仕組みに寄せる、の3つです。共有するものは全部ではなく、2回聞かれたことだけに絞ります。
お客さんから来た要望を、担当者しか知らなかった。前にも同じトラブルがあったのに、誰も覚えていなかった。チャットツールも共有フォルダもあるのに、大事なことほどそこに書かれていない。「もっと共有してください」と朝礼で言っても、1週間もすると元に戻る。「情報共有 できない 原因」で検索したのは、たぶんこういう状態が続いているからです。
検索すると、情報共有ツールの比較や、共有を評価制度に入れる方法がたくさん出てきます。ただ、それで直る会社は多くありません。この記事では、情報共有が止まる本当の原因と、人手の少ない会社でも回せる直し方を、順番に書きます。
情報共有ができないのは、書く人が得をしないから
書く手間は今、書く本人にかかります。得をするのは後で、別の人です。この差がある限り、共有は後回しになります。
情報共有の場面を、書く側から見てみます。お客さんとの電話が終わったあと、内容をチャットに書くのに5分かかるとします。その5分で、書いた本人の仕事は何も減りません。得をするのは、来週そのお客さんから電話を受けるかもしれない、別の誰かです。
人は目の前の仕事を優先します。今すぐ得をしない作業は、忙しい日から順に抜けていきます。「共有しない人」がいるのではなく、共有すると損をする形になっているのです。
書く側が損をする形は、だいたい次の3つです。
| 書く側の損 | 起きていること |
|---|---|
| 手間がかかる | 何を書けばいいか決まっておらず、毎回文章を考える |
| 見返りが無い | 書いても読まれた実感が無い。結局、口頭で同じことを聞かれる |
| 書くと損をする | 書いたことで担当を振られる、ミスを書くと責められる |
SaaSが使われない理由として挙げた「入力する人と得をする人が違う」も、同じ構造です(SaaSが使われない3つの理由|導入前に決める1行)。情報共有は、この構造がいちばんはっきり出る仕事です。
「聞けば済む」が共有を止める
もう1つ、共有が止まる理由があります。隣の人に聞けば済むことです。読む側から見ると、書かれたものを探すより、知っていそうな人に聞くほうが早い。聞かれた人は答えるので、書く理由がさらに無くなります。
この「聞いたほうが早い」が回っている職場では、書いても読まれず、読まれないから書かなくなります。マニュアルが読まれないのも同じ理由です(マニュアルが読まれない理由|読ませる工夫より、要らなくする)。
ツールを入れても直らない理由
チャットツールは書く場所を増やしますが、書く理由は増やしません。困っているのは読む側で、書く側ではありません。
探す側の負担が大きいのは確かです。Microsoftが2023年2月1日から3月14日に31か国の31,000人に行った調査では、回答者の62%が、仕事中に情報を探す時間が長すぎると答えています(Microsoft「Work Trend Index 2023: Will AI Fix Work?」)。
ただ、この困りごとを抱えているのは読む側です。ツールを入れて楽になるのも、主に読む側です。書く側から見ると、書く場所が1つ増えただけで、書く手間は減っていません。だから、入れた直後は書かれても、しばらくすると元に戻ります。
ツールが増えると、今度は「どこに書けばいいか分からない」が起きます。書く場所が3つあれば、書く側はどこに書くか迷い、読む側は3か所を探します。置き場所の決め方は、社内ツールが乱立したときの片づけ方|数より置き場所を決めるに書きました。
評価制度で縛る前に
共有を人事評価に入れる方法もあります。社員が多く、専任の担当者を置ける大きい会社なら回るかもしれません。ただ、人手の足りない会社で同じことをやると、評価のために「書いたことにする」投稿が増え、読む側の探す手間はかえって増えます。書かせる仕組みより、書かなくて済む仕組みのほうが続きます。
直す順番は「書く手間を減らす」から
書く手間を減らす、書いた人が得をする置き方にする、書かなくても残る仕組みに寄せる。この順番で直します。
いきなり全社の情報共有を作り直すと、続きません。書く側の損を1つずつ減らしていきます。
1. 書く手間を減らす
何を書けばいいかが決まっていないと、毎回文章を考えることになります。書くことを3つだけに決めます。
- 誰から(お客さん、取引先、社内の誰か)
- 何があったか(1行)
- 次に誰が何をするか
この3行が書いてあれば、読む側は困りません。きれいな文章は要りません。項目が決まっていれば、書くのは1分で済みます。
2. 書いた人が得をする置き方にする
書いた人の得は、同じことを聞かれなくなることです。そのために、聞かれたら口頭で答え直すのをやめて、書いた場所を返すようにします。「それはここに書いてあります」と返せば、2回目からは聞かれなくなります。書いた本人の手間が減るので、書く理由ができます。
もう1つは、書いたことで損をさせないことです。トラブルやミスを書いた人を責めると、次から書かれなくなります。「書いてくれたから早く気づけた」と言うほうが、次の共有につながります。
3. 書かなくても残る仕組みに寄せる
いちばん効くのは、書く作業そのものを無くすことです。ここで生成AIが使えます。会議や打ち合わせの音声を文字にして要約させる、長いチャットのやり取りを3行にまとめさせる。話したことが、書かなくても残るようにします。
AIに詳しくなる必要はありません。書く人から見て「何もしていないのに残っている」状態がいちばん良い状態です。
「うちでは何から共有すればいいか分からない」ところから、ご相談ください。いまのやり取りを一緒に見て、書く手間の小さいものから順に仕組みにします。相談と見積りに費用はいただきません。
共有するのは全部ではなく「2回聞かれたこと」だけ
何を共有すべきかは会社ごとに違います。全部を書かせず、同じことを2回聞かれたものから書きます。
「情報はすべて共有しましょう」と決めると、書く量が増えて、どれも書かれなくなります。お客さんの要望が大事な会社もあれば、現場の段取りが大事な会社もあります。一般的な「共有すべき情報の一覧」を持ち込んでも、自社には合いません。
基準は1つです。同じことを2回聞かれたら、2回目の答えを書いて置く。1回しか聞かれないことは、書かなくても困っていません。2回聞かれたことは、3回目も来ます。この基準なら、書くものは自然に絞られ、書いたものは必ず読まれます。
情報共有ツールを入れたかどうかには意味がありません。意味があるのは、同じことを聞かれる回数が減ったかどうかです。ツールをやめるか続けるか迷っている場合は、ツールが定着しない|直すか捨てるかの決め方を参考にしてください。
今日からやること
| 順 | やること | 目安 |
|---|---|---|
| 1 | 今週、同じことを2回聞かれた・聞いたものを3つ書き出す | 今日・10分 |
| 2 | 書く項目を「誰から/何があったか/次に誰が何をするか」の3行に決める | 今日 |
| 3 | 1で書き出したものを、2の3行で書いて1か所に置く | 今週 |
| 4 | 次に同じことを聞かれたら、口頭で答えずに置いた場所を返す | 今週から |
| 5 | 打ち合わせを1つ選び、音声をAIで要約して残してみる | 来週 |
| 6 | 1か月後、同じことを聞かれる回数が減ったかを振り返る | 1か月後 |
よくある質問
情報共有しない人がいるのはなぜですか。
多くの場合、その人にとって共有が損になっているからです。書く手間がかかる、書いても読まれない、書くと担当を振られる、のどれかに当たっていないかを見てください。本人の意識より先に、書く側の損を減らすほうが早く変わります。
情報共有を人事評価に入れるべきですか。
人手の少ない会社では、先に書く手間を減らすことをおすすめします。評価に入れると、評価のための投稿が増え、読む側が探す手間がかえって増えることがあります。評価に入れるなら、投稿の数ではなく「同じ質問が減ったか」で見るほうが、目的とずれません。
情報共有は口頭ではダメですか。
口頭でかまいません。急ぎのことや細かい相談は、話したほうが早く済みます。ただ、口頭だけだと、その場にいなかった人には残りません。2回聞かれたことだけは、話したあとに3行で書いて置く。これで口頭の速さと、残る仕組みの両方が取れます。
まとめ
社内で情報共有ができない原因は、社員の意識より、書く人が得をしない構造にあります。書く手間は今、書く本人にかかり、得をするのは後で読む別の人です。チャットツールを入れても書く場所が増えるだけで、書く理由は増えません。
直す順番は3つです。書くことを3行に決めて手間を減らす。聞かれたら書いた場所を返して、書いた人が得をする置き方にする。音声の要約などで、書かなくても残る仕組みに寄せる。共有するのは全部ではなく、2回聞かれたことだけに絞ります。
入力する人と得をする人がずれる構造はSaaSが使われない3つの理由|導入前に決める1行に、聞いたほうが早い職場の直し方はマニュアルが読まれない理由|読ませる工夫より、要らなくするに、ツールを続けるかやめるかはツールが定着しない|直すか捨てるかの決め方に書きました。
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