Slackが定着しない理由|先に1つの用件を移す
Slackが定着しないのは、使い方が難しいからではありません。何をSlackで話すかが決まっていないので、メールやLINEと並んで残るのです。
まずアナリティクスで、メッセージがチャンネルとダイレクトメッセージのどちらで送られているかを確かめます。
移すのは1つの用件だけ。その用件は「このチャンネルでしか受けない」と決め、古い窓口を閉じます。
メールの往復を減らしたくて、Slackを入れた。全員のアカウントを作り、チャンネルもいくつか用意した。ところが数か月たっても、大事な連絡はメールで届き、急ぎの話はLINEか電話で来る。Slackを開いているのは一部の人だけで、気づけば「Slackにも書いておきました」と、同じ連絡を二か所に送っている。
この記事は、Slackの機能の紹介ではありません。Slackで実際に何が話されているかをどう確かめるかと、移すときに何から決めるかを書きます。
Slackが定着しないのは、使い方が難しいからではない
何をSlackで話すかが決まっていないので、今までの連絡手段と並んで残るのが一番の原因です。
Slackの操作は、スマホのチャットとあまり変わりません。定着しないのは、操作ではなく決め方の問題です。止まりかけたSlackを見ると、たいてい次のどれかが当たっています。
古い連絡手段を、どれも閉じていない
Slackを入れても、メールもLINEも電話も今までどおり使えます。Slackを見ていない人が一人でもいれば、大事な連絡はメールかLINEで送られます。そうなると、Slackを見なくても仕事は回るので、見ない人はずっと見ないままです。
道具を一つ足しただけで、何もやめていない状態です。
チャンネルではなく、個人どうしのやりとりになっている
Slackには、チームや話題ごとに分けたチャンネルと、相手を選んで送るダイレクトメッセージがあります。チャンネルが使われずにダイレクトメッセージばかりになると、Slackは「会社で使うLINE」になります。やりとりは当事者にしか見えないので、ほかの人が経緯を追えず、引き継ぎもできません。
これは、書いた人が得をしない情報共有と同じ構造です。詳しくは社内で情報共有ができない原因に書きました。
チャンネルが増えて、どこに書けばいいか分からない
チャンネルは誰でもすぐに作れるので、似たチャンネルが並びます。書く前に迷う道具は使われず、迷った人は結局ダイレクトメッセージで送ります。
まず「どこで話されているか」をアナリティクスで確かめる
感覚ではなく、アナリティクスダッシュボードの「メッセージの送り先」で確かめます。
立て直す前に、Slackが本当に使われていないのか、使われ方が偏っているだけなのかを確かめます。Slackには、ワークスペースの利用状況を見られるアナリティクスダッシュボードがあります。
Slackの公式ヘルプ「Slack アナリティクスダッシュボードを閲覧する」によると、ダッシュボードはすべてのプランで利用でき、デスクトップのサイドバーにある「管理者」から「ワークスペースアナリティクス」を選ぶと開けます。フリープランで見られるのは「概要」タブの基本的な指標で、有料プランではチャンネルやメンバーごとの詳しい指標も見られます。なお、メンバーごとの指標は、初期設定ではワークスペースのオーナーと管理者だけが見られます。
見る指標は、公式ヘルプ「Slack アナリティクスダッシュボードのデータを理解する」に定義が並んでいます。見るのは三つだけです。
- メンバー数合計と、アクティブなメンバー数(月次):アカウントを持っている人のうち、実際にメッセージを閲覧または投稿した人がどれだけいるか。月次は当日と過去28日間で数えます
- 投稿したメンバー数:読むだけでなく、書いている人がどれだけいるか。読むだけの人が多ければ、Slackは「お知らせの掲示板」になっています
- メッセージの送り先:パブリックチャンネル、プライベートチャンネル、ダイレクトメッセージで送られているメッセージの割合
特に大事なのが三つめです。ダイレクトメッセージの割合が大きければ、Slackは個人どうしの連絡にしか使われていません。チャンネルが機能していないということです。
有料プランなら、チャンネルごとに「最後にアクティブだった日」(最後のメッセージが投稿された日付)も見られます。ただし同じ公式ヘルプにあるとおり、プロプランとビジネスプラスプランで見られるのはパブリックチャンネルの分だけです。止まっているチャンネルは、やめる候補になります。
移すのは1つの用件だけ。古い窓口は閉じる
全部の連絡を移そうとせず、1つの用件だけを「このチャンネルでしか受けない」と決めます。
定着させようとして、多くの会社は「これからは連絡はSlackで」と全社に呼びかけます。でも、全部を一度に移すと、どの連絡をSlackで送ればいいのか、送る人が毎回判断することになります。判断が要る連絡は、慣れた手段に戻ります。
先に決めるのは、どの用件を、どのチャンネルで受けるかです。それも一つだけにします。
たとえば、総務への備品や手続きの依頼を移すと決めたとします。「総務への依頼は #help-総務 にだけ書く。メールや口頭で来た依頼は、総務の人が #help-総務 に書き直してから受ける」と決めます。依頼する人にとっては、そこに書かないと受けてもらえないので、Slackを開く理由ができます。総務の人にとっては、依頼が一か所にまとまるので、抜けや二重の対応が減ります。
名前で、何のチャンネルか分かるようにする
チャンネルの名前は、初めて見た人でも用途が分かるようにします。Slackの公式ヘルプ「チャンネル名のガイドラインを作成する」では、カテゴリーごとに標準のプレフィックス(名前の頭に付ける共通の言葉)を決める方法が紹介されています。例として、他の部署への質問に使う「help-」、特定のチームの業務に使う「team-」、重要な通知に使う「announce-」などが挙がっています。
同じヘルプでは、チャンネルのトピックと説明を書いておくことや、使わなくなったチャンネルをアーカイブすることも勧められています。
大事なのは名前の付け方そのものより、決めた用件以外のチャンネルを増やさないことです。一つの用件が回るまでは、チャンネルは最小限にしておきます。
大きい会社のやり方は持ち込まない
大きな会社では、全社のチャンネル設計を先に作り、部署ごとに一斉に切り替える進め方もあります。人の足りない会社では、それはできません。設計を作っている間に、現場はメールとLINEで仕事を回し続けます。
移すのは一度に一つの用件だけにします。その用件がSlackだけで1か月回ったら、次の用件に進みます。地味ですが、これが一番戻りません。
「うちのSlack、どの用件から移せばいいか」から、ご相談ください。今の連絡の流れを一緒に見て、最初に移す用件と、閉じる窓口を決めるところから始めます。
決まったことは、Slackの外にも残す
フリープランでは古いメッセージが見られなくなるので、決まったことは別の場所に残します。
Slackを無料のまま使っている会社は多いと思います。その場合に知っておくべき制限があります。公式ヘルプ「Slack のフリープランの機能制限」によると、フリープランでは、メッセージとファイルの履歴は直近の90日分に制限され、ワークスペース内の1年以上経過したデータはすべて削除されます。
これを知らないまま使っていると、「前にSlackで決めたはずの話が、探しても出てこない」ということが起きます。一度そうなると、「大事なことはSlackに書いても残らない」と思われ、大事な連絡ほどメールに戻ります。
対策は二つです。一つは、取り決めや手順のように後から見返すものは、社内の共有フォルダや台帳など、Slackの外にも残すこと。もう一つは、Slackを会社の記録の置き場として使うと決めるなら、有料プランを検討することです。どちらにするかは会社ごとに違いますが、決めないまま使うのが一番よくありません。
使わなくなったツールを直すか捨てるかで迷っているなら、判断の分かれ目はツールが定着しない|直すか捨てるかの決め方に書きました。
今日からやること
| やること | 目安 | ポイント |
|---|---|---|
| 「管理者」→「ワークスペースアナリティクス」を開く | 10分 | オーナーか管理者の権限で開く |
| メンバー数合計と、アクティブなメンバー数(月次)を見比べる | 10分 | 読むだけの人と書いている人も分けて見る |
| 「メッセージの送り先」で、ダイレクトメッセージの割合を確かめる | 10分 | 大きければ、チャンネルが機能していない |
| Slackに移す用件を1つだけ決める | 30分 | 依頼や問い合わせなど、受ける人がはっきりしている用件にする |
| その用件のチャンネルを作り、トピックと説明を書く | 15分 | 名前で用途が分かるようにする |
| その用件のメール・口頭の窓口を閉じると全員に伝える | 15分 | 届いたものは受ける側がチャンネルに書き直す |
| フリープランなら、決まったことを残す場所をSlackの外に決める | 30分 | 履歴は直近90日分しか見られない |
| 1か月後、その用件がSlackだけで回っているかを確かめる | 15分 | 回っていれば、次の用件に進む |
よくある質問
Slackが定着しないのは、社員がITに不慣れだからですか。
ほとんどの場合、違います。同じ社員がスマホのチャットは毎日使っています。原因は、何をSlackで話すかが決まっていないことのほうにあります。使い方の研修を増やす前に、Slackでしか受けない用件があるかを確かめてください。
LINEで足りているなら、Slackはやめてもいいですか。
やめる判断もあります。ただ、個人のLINEで仕事の連絡をすると、経緯が当事者にしか残らず、人が辞めたときに引き継げません。少人数で、やりとりを後から追う必要がないなら、無理にSlackに移さなくてもかまいません。後から追う必要がある用件だけでも、チャンネルに移す価値はあります。
Teamsなど別のツールに乗り換えれば解決しますか。
乗り換えるだけでは、同じことが起きます。何をそこで話すかが決まっていなければ、どのツールでもメールやLINEと並んで残ります。乗り換えを考える前に、今のSlackで一つの用件が回るかを試してください。
まとめ
Slackが定着しないのは、使い方が難しいからではありません。古い連絡手段を閉じていない、ダイレクトメッセージばかりでチャンネルが使われていない、チャンネルが多すぎてどこに書けばいいか分からない。原因は、何をSlackで話すかの決め方にあります。
まずアナリティクスダッシュボードで、アクティブなメンバーの数と、メッセージがどこで送られているかを確かめます。そのうえで、移す用件を一つだけ決め、その用件は「このチャンネルでしか受けない」として古い窓口を閉じます。フリープランなら、決まったことはSlackの外にも残します。
見るべきは、Slackのアカウントを何人分作ったかではなく、Slackだけで回っている用件がいくつあるかです。一つ回れば、次の用件の移し方も見えてきます。
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