SFAが定着しない理由|営業が入力しても得をしない
SFAが定着しないのは、営業が怠けているからではありません。入力するのは営業で、得をするのは上司と会社です。営業の側から見ると、手間が増えただけで返ってくるものがありません。
まず、入力が止まっている項目を「会議で使う」「誰も見ない」「入れないと営業が困る」の三つに分けます。
誰も見ない項目を消し、メールや予定のように自動で入るものは手で入れさせず、残った入力で営業に返るものを作ります。
営業の動きを見えるようにしたくて、SFAを契約した。商談の進み具合も、訪問の記録も、全部ここに入れてもらう約束だった。ところが半年たつと、入力しているのは一部の人だけ。週の営業会議は、結局それぞれが口頭で報告している。上司は「入力して」と言い続け、営業は「入れる時間がない」と言い続けている。
この記事は、SFAの選び方や、定着化の支援会社の比較の話ではありません。営業が入力しない本当の理由と、入力を増やすのではなく減らす順番を書きます。CRMでも、考え方は同じです。
SFAが定着しないのは、営業が怠けているからではない
入力するのは営業で、得をするのは上司と会社です。営業に返ってくるものがないので、入力が止まります。
SFAが定着しない会社で、営業の人に話を聞くと、たいてい真面目に働いています。お客さんへの連絡も、見積もりも、きちんとやっている。それでもSFAには入れない。理由は、やる気より構造のほうにあります。
入力するのは営業、見るのは上司
商談の金額や確度、次の訪問予定を入力するのは営業本人です。それを一覧やグラフで見て、売上の見通しを立てたり、手が足りない案件を見つけたりするのは、上司や経営者です。営業から見ると、自分の仕事が一つ増えただけで、自分の仕事は何も楽になっていません。
書く人と得をする人が違うと、書かなくなる。これはSFAに限った話ではありません。情報共有全般で同じことが起きる構造は、社内で情報共有ができない原因|書く人が得をしない構造に書きました。SFAで特に強く出るのは、営業が一日の大半を外で過ごしていて、入力する時間そのものが取りにくいからです。
入力が「報告」になると、後回しになる
SFAへの入力が、上司への報告の代わりになっている会社は多いです。報告は、仕事が終わったあとにまとめて書くものです。お客さんとのやり取りの最中には書きません。だから夕方や週末にまとめて入力することになり、忙しい週ほど空白が増えます。
空白が増えると、上司は一覧を見ても状況が分かりません。結局、会議で口頭の報告を求めます。口頭で済むなら、営業はますます入力しなくなります。
入力した内容で詰められると、正直に書かなくなる
もう一つよくあるのが、入力した内容をもとに会議で問い詰められることです。確度の低い商談を正直に入れたら、「なぜ進んでいないのか」と言われる。そうなると、営業は都合の悪いことを書かなくなるか、そもそも書かなくなります。
入力された数字が実態とずれてくると、上司もSFAを信用しなくなります。誰も信用していない数字を、誰が入力し続けるでしょうか。
まず、入力が止まっている項目を三つに分ける
「誰が入力していないか」ではなく、「どの項目が空いているか」を見ます。
SFAが定着しないとき、まず入力しない人を探しがちです。でも、人を責めても入力は増えません。先に見るのは項目です。商談や活動の画面に並んでいる項目を一つずつ見て、空いていることが多い項目を書き出します。
書き出した項目を、次の三つに分けます。
- 会議や判断で実際に使っている項目:金額、次の予定、受注の見込み時期など。上司が見て、何かを決めている項目です
- 誰も見ていない項目:導入のときに「あったほうがいい」と足したが、一覧にもレポートにも出てこない項目です
- 入れないと営業本人が困る項目:お客さんの担当者名や、前回話した内容など。引き継ぎや次の訪問で、自分が助かる項目です
分けるときは、上司が一人で決めずに、営業を一人か二人呼んで一緒に見ます。「この項目、誰か見ていますか」と聞くと、意外なほど多くの項目で答えが返ってきません。
入力を増やすのではなく、減らす順番
誰も見ない項目を消し、自動で入るものは手で入れさせず、最後に残った入力で営業に返るものを作ります。
一つめ:誰も見ていない項目を消す
二つめに分けた「誰も見ていない項目」は、入力を求めるのをやめます。必須の項目になっているなら、必須を外します。入力欄を減らすだけで、一件あたりの入力の手間は軽くなります。
「いつか分析に使うかもしれない」という理由で残したくなる項目もあります。ただ、今だれも見ていない項目は、空欄だらけのまま残るだけで、いつか使えるデータにはなりません。要るようになったら、そのときに足せば足ります。
二つめ:メールや予定から自動で入るものは、手で入れさせない
営業がSFAに入力している内容の多くは、すでにどこかに書いてあります。お客さんとのメール、カレンダーに入れた訪問の予定がそうです。それをもう一度SFAに打ち直しているなら、それは転記です。転記を減らす考え方は、転記作業の無駄をなくす|自動化の前に、消す転記を分けるに書きました。
SFAの多くには、メールやカレンダーとつなぐ機能があります。たとえばSalesforceの学習サイト「メールとカレンダーのインテグレーションツールについて学習する」では、Einstein 活動キャプチャについて、MicrosoftかGoogleのアカウントをSalesforceに接続すると、行動や取引先責任者が自動で同期され、行動やメールが関連するレコードの活動タイムラインに追加されると書かれています。同期するデータの種類と方向は、ユーザーが決められます。
使える機能や条件は、契約しているプランによって違います。同じページにも、製品ごとに必要なライセンスとシステム要件の確認が載っています。自社のプランで使えるかは、管理画面と公式ヘルプで確かめてください。大事なのは機能の名前ではなく、営業が手で打たなくても入るものは、手で打たせないと決めることです。
三つめ:残った入力で、営業に返ってくるものを作る
最後に残るのは、「会議で使う項目」と「営業本人が困る項目」です。ここで、入力した営業の側に返ってくるものを一つ作ります。
たとえば、次の訪問予定を入れておけば、前日に自分へ知らせが届く。前回の商談メモを入れておけば、休んだ日に同僚が代わりに対応できる。週の会議では、SFAに入っている案件だけを画面に映して話し、入っていない案件は話題にしない。どれも地味ですが、「入れておくと自分が楽になる」と営業が感じられれば、入力は報告から道具に変わります。
大きい会社のやり方は持ち込まない
大きな会社では、SFAの専任管理者を置き、入力率を毎週集計して、営業ごとに順位を出す進め方もあります。人の足りない会社でそれをやると、管理する仕事が一つ増えるだけです。営業から見れば、入力の手間に加えて、監視される窮屈さも増えます。
一度に全部の項目を立て直そうとしないでください。まず一つのチーム、一つの商談の種類から始め、1か月続いたら次に広げます。
「うちのSFA、どの項目から減らせばいいか」から、ご相談ください。今の入力画面と会議の資料を並べて見るところから、一緒に始めます。
「入力率」ではなく、何が減ったかを見る
定着したかどうかは、入力の件数ではなく、口頭の報告や確認の電話が減ったかで判断します。
SFAを入れた目的は、入力してもらうことではありません。営業の状況を知るための手間を減らすことです。だから、入力率が上がったかどうかより、次のことが減ったかを見ます。
- 週の会議で、一人ずつ口頭で報告する時間
- 上司が営業に「あの件どうなった」と聞く回数
- 担当者が休んだときに、お客さんの状況が分からず困る場面
入力率が上がっても、会議の口頭報告がそのまま残っているなら、営業は二重に報告しているだけです。それはむしろ悪くなっています。
ツールの数が増えて、どこに何を書けばいいか分からなくなっている場合は、SFAだけを見ても解決しません。置き場所を決め直す話は、社内ツールが乱立したときの片づけ方|数より置き場所を決めるに書きました。手で入力する道具が使われない構造は、kintoneが使われない理由|最初に決めるのは見る人でも同じように扱っています。
今日からやること
| やること | 目安 | ポイント |
|---|---|---|
| 商談と活動の入力画面にある項目を全部書き出す | 30分 | 必須の項目には印を付けておく |
| 空いていることが多い項目に印を付ける | 30分 | 人ではなく項目で見る |
| 営業を一人か二人呼び、項目を三つに分ける | 1時間 | 会議で使う/誰も見ない/入れないと営業が困る |
| 誰も見ていない項目の必須を外す | 30分 | 消す前に、まず必須をやめる |
| メールと予定をSFAに打ち直していないか確かめる | 30分 | つなぐ機能があるか、自社のプランで確かめる |
| 営業に返ってくるものを一つ決めて設定する | 1時間 | 予定の前日の知らせ、会議で映す一覧など |
| 1か月後、会議の口頭報告が減ったかを見る | 15分 | 入力率ではなく、減った手間で判断する |
よくある質問
SFAが定着しないのは、ツールの選び方が悪かったからですか。
ツールを替えれば解決することは、あまりありません。入力する人と得をする人が違う構造は、どのSFAでも同じだからです。乗り換えを考える前に、誰も見ていない項目を入力させていないか、メールや予定を手で打ち直させていないかを確かめてください。それで軽くならなければ、そこで初めてツールの見直しを考えます。
入力しない営業には、評価で差をつけるべきですか。
おすすめしません。入力を評価に入れると、件数を稼ぐための中身の薄い入力が増えます。上司が見たいのは正しい状況なので、それでは目的から遠ざかります。先に入力の手間を減らし、入力すると営業本人が楽になる形を作るほうが、結果として入力は続きます。
定着化の支援会社に頼んだほうがいいですか。
頼む前に、社内で決めておくことがあります。どの項目を誰が見て、何を決めるのか。それが決まっていないまま支援を頼むと、入力の手順やマニュアルは整っても、営業に返ってくるものがないままになります。項目を三つに分けるところまでは、社内でやってから相談するほうが、話が早く進みます。
まとめ
SFAが定着しないのは、営業が怠けているからではありません。入力するのは営業で、得をするのは上司と会社です。入力が報告の代わりになり、入力した内容で詰められると、営業は書かなくなります。
まず、入力が止まっている項目を「会議で使う」「誰も見ない」「入れないと営業が困る」の三つに分けます。誰も見ない項目は消し、メールや予定のように自動で入るものは手で打たせません。残った入力で、営業本人に返ってくるものを一つ作ります。
見るべきは入力率ではなく、会議の口頭報告や「あの件どうなった」が減ったかどうかです。入力を増やすのではなく、減らすところから始めてください。
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