株式会社Raven トップへ戻る
2026-09-08導入と定着

総務からAIを始める|最初に渡す1業務の選び方

総務からAIを始める|最初に渡す1業務の選び方
この記事の結論

最初に渡すのは「社内からの問い合わせに対する一次回答の下書き」です。稟議と備品発注は後にしてください。

総務には「毎日30分の定型」がほとんど無いので、業務の長さで選ぶと候補が出てきません。選ぶ軸を「同じことを何回聞かれているか」に入れ替えます。

ただし渡す前に、個人情報・人事・契約が混ざっている業務を1回で切り分けてください。総務は会社で最も個人情報に近い部門です。

AIを試そうという話になり、担当は総務になった。ところが総務の仕事は幅が広く、稟議の受付も、備品の発注も、社内からの問い合わせも、全部が総務に来ます。どれから渡すかが決まらないまま、アカウントだけが増えていく。

この記事は、その1業務を決めるところだけを扱います。全体の進め方はAI導入の進め方に分けました。


AIを最初に入れているのは、実は総務だった

総務は「後回しの部門」ではなく、実際に最初に入っている部門です。

中小企業基盤整備機構が2026年3月に公表した中小企業のAI等の利活用に係る実態調査を見ます。令和7年11月17日から12月12日にかけて、全国の中小企業10,000社へWebアンケートで実施したものです。

AIの導入率は20.4%でした(n=1,647)。導入を検討中の18.6%と合わせて39.0%です。まだ5社に1社です。

注目したいのは次です。すでにAIを導入していると答えた企業に、どの業務分野で導入しているかを聞いた結果がこれです。

AIを導入した企業が、どの業務分野に入れているか。最も多いのは総務・管理部門。
AIを導入した企業が、どの業務分野に入れているか。最も多いのは総務・管理部門。
業務分野AIを導入している割合
総務・管理部門(バックオフィス)68.3%
営業・販売・サービス部門(顧客対応、フロント)60.3%
経営・企画部門58.5%
製造・生産部門(開発、調達、在庫管理等)34.9%

最も高いのは総務・管理部門の68.3%。 製造・生産部門の34.9%とは2倍近い開きです。

なぜ総務が先になるのか

調査が答えている部分ではないので、現場で見ている範囲での読みとして書きます。理由はたぶん2つです。

1つ目は、総務の仕事は社外に出ないこと。見積書を間違えれば客に届きますが、社内の案内文を間違えても社内で止まります。最初の1業務としては、これがそのまま安全性になります。

2つ目は、総務の仕事の多くが文章だからです。同じ調査で、AI導入済み企業が使っているAIサービスは「生成AI」が82.6%と突出していました(n=322)。総務には、通達も案内も規程も議事録もあります。

つまり総務が選ばれているのは、総務が特別にAIに向いているからというより、手持ちの道具が最初に噛み合う場所が総務だったということです。

ところが総務には「毎日30分の定型」が少ない

業務改善の一般的な選び方を総務にそのまま当てると、候補が出てこなくなります。

業務改善は何から始めるかでは、毎日発生していて、判断が要らなくて、転記が絡んでいる業務から選ぶと書きました。これは業種を問わず効く選び方です。

ところが総務の業務にこの3つを当てると、手が止まります。

総務の仕事は「毎日30分の塊」ではなく、「年1回の大物」と「毎日の細切れ」でできています。 条件を満たすものが、そもそも少ない。

総務がしんどいのは、長いからではなく、切られるから

年1回の業務は後回しでいい。問題は細切れのほうです。1件2分の問い合わせは、それ自体は何の負担でもありません。負担なのは、それが自分の作業の途中に割り込んでくることです。

年末調整の資料を作っている最中に「印鑑どこですか」と聞かれ、答えて戻ると、どこまでやったか分からなくなる。1日に10回あれば、失われているのは20分ではありません。

だから総務では、選ぶ軸を「業務にかかる時間の長さ」から「同じことを何回聞かれているか」に入れ替えます。

稟議・備品・問い合わせ取次。渡すのはどれか

渡すのは問い合わせ取次。稟議と備品発注は後にします。

基準はAIに任せていい仕事の見分け方と同じ、「入って3か月の新人に任せられるか」です。

最初に渡すのは、判断が要らず、毎日何度も来るもの。
最初に渡すのは、判断が要らず、毎日何度も来るもの。
稟議・申請の処理備品・消耗品の発注社内問い合わせの取次
判断が要るか要る(金額・妥当性)要る(在庫と実物の照合)要らない(答えは規程に書いてある)
間違えたら決裁が通ってしまう発注ミス。金額が出る聞いた人が「違う」と言う
頻度月に数件〜十数件月1回毎日、何度も
最初に渡すか渡さない渡さないここから

稟議を渡さない理由

稟議は、決裁の順番も、通りやすい書き方も、会社ごとに違います。判断そのものが仕事で、文章はその結果でしかありません。AIに渡せるのは文章の部分だけなので、いちばん重い部分が手元に残ります。

そして、間違ったまま通ってしまったときに戻すのが難しい。最初の1業務は、間違いにその場で気づける業務から選んでください。

備品発注を渡さない理由

判断の難しさというより、照合が要るからです。棚に何本残っているかは社内のどのデータにも書いておらず、人が見に行かないと分かりません。しかも月1回なので、改善しても効果が積み上がるまでに1年かかります。

具体的に何を渡すか

業務そのものではなく、一次回答の下書きだけを渡します。

「育休の申請はどこに出せばいいですか」と聞かれたとき、就業規則と社内規程を読ませたうえで返信の下書きを作らせる。担当者はそれを読み、合っていれば送り、違っていれば直して送ります。判断は渡していません。渡しているのは、規程を探して読み直して文章にする部分だけです。

帝国データバンクが2026年3月17日から31日に全国23,349社へ実施し、10,312社から回答を得た生成AIに関する企業の動向調査でも、生成AIの使い道は「文章の作成・要約・校正」が45.1%で最多、次が「情報収集」の21.8%でした。すでに効いているのは、まさにこの部分です。

この形なら、総務の担当者が「AIを使っている」と身構える必要もありません。 下書きが出てくるだけです。AIに詳しくなる必要はなく、使う人が意識しないまま仕事が軽くなっているのが、いちばん良い状態です。

渡す前に、情報の種類で1回だけ切る

総務は、会社で最も個人情報に近い部門です。ここだけは業務を選ぶ前に切ります。

同じ帝国データバンクの調査で、生成AI活用の懸念は「情報の正確性」が50.4%で最多、次いで「専門人材・ノウハウ不足」41.3%、「生成AIを活用すべき業務の範囲」40.0%、「情報漏洩のリスク」33.5%でした。

3番目が40.0%あるということは、4割の会社が、どこまで渡していいかを決められないまま止まっているということです。総務なら、その線は情報の種類で引くのが最も早い。

渡す前に情報の種類で1回だけ切る。給与・評価・契約は最初の1業務にしない。
渡す前に情報の種類で1回だけ切る。給与・評価・契約は最初の1業務にしない。
扱う情報最初の1業務にするか
就業規則・社内規程・各種手続きの案内する。 社員に公開されている情報
社内向けの通達文・案内文・議事録する。社外に出ない
給与額、人事評価、健康診断の結果しない。 本人以外が見てよい情報ではない
契約書、取引先との条件しない。間違いに誰も気づけない
採用応募者の個人情報しない

線が引けたら社内ルールを1枚にします。項目は3つで足ります(生成AIの社内ルールは3つで足りる)。

ここで、ガイドライン整備から始めないでください。 委員会を作り、規程を整え、研修を組んでから1業務目に入る進め方は、それを回す担当者がいる会社で成立します。総務が1人、経理と兼務の会社では、整備の途中で日常業務に押し戻されて終わります。1業務を動かしながら、必要な線だけを引く。

自社の総務のどこから渡すか、切り分けだけでもご相談ください 相談と見積りに費用はいただきません。

なお、渡したのに使われないまま止まっている場合は、原因が業務の選び方ではないことがあります。そちらはAI導入がうまくいかない原因へ。

今日からやること

上から順に。1時間ほどで終わります。

#やること目安
1今週、社内から聞かれた質問を思い出せるだけ書き出す15分
2そのうち「2回以上聞かれた質問」に印をつける5分
3印がついた質問の答えが、規程・マニュアルのどこに書いてあるかを確認する15分
4どこにも書いていない質問は、今回の対象から外す3分
5残った質問1種類だけを対象に決める。複数選ばない3分
6その質問が月に何回来ているかを、感覚でいいので数字にして残す5分
7給与・評価・契約・応募者情報が混ざる質問を、対象から外す5分

4番を飛ばさないでください。 どこにも書いていない質問は、AIではなく社内の情報が整っていないという別の問題です。先に混ぜると1業務目が終わりません。

6番の数字が、後で効果を判定する唯一の材料になります(AI導入の効果測定)。「AIを導入した」という宣言に意味はなく、意味を持つのは何が減ったかだけです。

よくある質問

総務が1人しかいません。それでも始められますか。

始められます。むしろ1人のほうが向いています。決めるのに合意形成が要らないからです。 ただし対象は1種類だけに絞ってください。1人で複数を同時に動かすと、日常業務が来た時点で全部止まります。

議事録の作成から始めるのは駄目ですか。

駄目ではありません。会議の頻度が高い会社なら、そちらが正解のこともあります。判断は「月に何回発生しているか」です。月2回の会議のために仕組みを作っても、効果が見えるまでに時間がかかります。 同じ悩みでも、一社一社やり方は違います。

社内問い合わせの答えを間違えたら、責任問題になりませんか。

下書きを人が読んでから送る限り、送信の責任は今までと同じく総務にあります。変わっているのは、規程を探して文章にする部分だけです。 逆に言えば、下書きをそのまま自動送信にした瞬間、この話は別の問題になります。最初はそこまでやらないでください。

導入コストが心配です。

1業務目に、新しい仕組みは要りません。すでに契約しているAIに、自社の規程を読ませて下書きを作らせるだけです。ここで増える費用はありません。

買う判断は、時間が本当に減ることを確認してからで間に合います。先に道具を買うと、効果が出なかったときに「AIが合わないのか」「その道具が合わないのか」を切り分けられなくなります。

まとめ

総務からAIを始めるとき、決めるのは1業務だけです。

どこから手をつけるか分からない場合は、ご相談ください。いまのやり方を伺うところから始めます。ご相談とお見積りに費用はいただきません。

相談する
この記事を書いた人
清水 飛鳥株式会社Raven 代表

中小企業と個人事業主の業務を、その会社に合った形で仕組みに変える会社を経営しています。

本記事はAIを用いて作成し、公開前に内容を確認しています。